■中谷防衛相

中谷元防衛相(左)と、就任後初の会談に臨む翁長雄志知事(左)=9日午前11時、沖縄県庁

 沖縄は、わが国の安全保障上大変重要な地域で、戦後長らく米軍の施政下であり、米軍基地施設が集中し、大変大きな負担をおかけしていることを非常に重く受け取っている。

 翁長知事が平素からおっしゃっていることや県民の皆さまの米軍に対する思いがいかに大きなものであるのか、そういった視点について今日はこちらへ訪問させていただきましたので、その点をお伺いしたい。

 まず、私の方から沖縄の地理的な重要性を話したい。A2ADという言葉がある。これは接近を阻止する、領域に入ってくることを拒否するという言葉で、沖縄は周辺国から見て大陸から太平洋にアクセスする上においても、また太平洋から大陸へのアクセスを拒否するにしても、非常に周辺国から見て戦略的な目標となる大変重要な場所。

 最近、中国による南西海域での活動が非常に活発化している。年間のスクランブル、緊急発進の回数の推移は、過去20年間で、平成7(1995)年度は166回、平成26(2014)年度は943回と6倍近くに急増した。

 南西航空団の年間のスクランブルは、5年前には数十回だったのが、今は468回、4倍以上に増加した。中国の飛行機に対するスクランブルは、5年前が96回、今は464回と5倍近く。おおよそ南西航空団が対応している。

 次は防空識別区だが、平成25(2013)年11月に中国が独自の主張で設定した。飛行計画の通報義務や中国の武装力で防御的緊急措置を行う、指令に従わない航空機に対してそういうふうな行動をしている。

 最後に、中国の公船、尖閣諸島に対する領海侵入の回数は、国有化前は合計5回、たったの5回。ところが国有化後は、117回、毎月10隻が3回のペースで続いている。今航空自衛隊も海上保安庁もこの対応が大変で、状況は変化している。

 一方、先だって2プラス2で日米の防衛首脳会談を行った。アメリカもリバランスといって、アジア太平洋には力を入れていくと言う。尖閣諸島では安全保障条約におけるコミットをするということを再確認した。こういった周辺国も日本も米国も、いずれも沖縄が戦略的に極めて重要な位置に存在しているということをまず申し上げたい。

 次に、こういった事態に対してどうするか。自衛隊は、特に南西方面で島しょの警備を強化するということで自衛隊の態勢を強化する。沖縄の米軍の存在意義は、自衛隊の持っている抑止力と対処力を補完強化する存在で、不可欠なものと認識している。

 しかし、沖縄における基地負担、これは地元の皆様方の負担にかかっているというのは事実で、負担軽減は米国とも協議した上で、実現可能なものから着実に実施する。先日の2プラス2でも沖縄の基地負担軽減を米側に要請し、米側もコミットメントを示した。負担軽減で政府は力を入れている。政府の仕事は、やはり国民の命を守り、暮らしを守るという安全保障の責務を負う。一方で、抑止力を維持するという両方の仕事をしていかなければならない。

 普天間基地の問題だが、やはり沖縄における米軍基地の中でも、特に市街地の真ん中にあり、住宅や学校が密接にある普天間基地の危険性除去、これは大変重要な問題で、翁長知事もご承知のように平成8(1996)年にSACO合意をする際、沖縄県の要望から、普天間の全面移設、閉鎖、こういうことも合意決定した。

 私はこの問題の原点はその点にあって、普天間基地を固定化させない、これは日本政府も沖縄も共通の認識ではないかと思っている。その上で私も2001年、2年に防衛庁長官をさせていただき、こうした抑止力の維持と普天間の危険性除去ということを地元の皆さんとも話をした。辺野古の移設を決定したことに関わった人間の一人として、いろいろと経緯はあったが、どう考えてもやはり、普天間を辺野古に移設するというのは唯一の解決策だと確信し、一日も早い普天間基地の返還に向けて全力を持って、安全に留意しつつ移設を進めていきたい。

 最後に、自衛隊の態勢について。今沖縄における自衛隊といえば、警戒監視、災害派遣、不発弾処理、患者の緊急搬送などに従事している。この点で皆さんに大変お世話になっており、感謝するが、これに加えて南西の島しょの態勢強化として沿岸監視部隊と警備部隊の配置を計画している。

 与那国島に配備する沿岸監視部隊は本年度の新編に向けて整備を進めている。それから先島諸島、宮古島市から調査に着手し、警備部隊の配置にむけて具体化の検討を行う。それから南西地域の防空体制を強化するために那覇基地における戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に増勢しまして、第9航空団を新編し、南西地域のレーダーサイトの自衛隊の充実を図る。

 このほか、那覇港湾施設の浦添への移設、第2滑走路内の自衛隊用地の問題点、嘉手納より南の基地返還の早期実現など多くの案件があり、これからも県のみなさんとお話し合いをして協議しなければならない。いずれにしてもわが国の安全保障と沖縄県の発展に関わることで、今後ともよろしく協議をさせていただき、こういった話し合いが実を結ぶように努力をして参りたい。

■翁長知事

 先月は菅官房長官、安倍総理大臣とお会いし、いろんな話し合いをさせていただいた。本土の方々に大変注目していただき、中央メディアの世論調査で平均して10%ぐらいの差で辺野古新基地に反対が示され、本土の理解が深まったことに意を強くしている。

 中谷大臣とは那覇市長時代、2、3年前に自民党県連内で普天間の県外移設、オスプレイ配備に関して議論をさせていただいた。平行線とはいえ、互いの主張を確認し、今後の議論を約束したことを覚えている。

 しかしながら昨年暮れに中谷さんが防衛大臣、私が知事に就任し、国と県の責任者として、またお会いできることを期待したが、国会答弁やマスコミ報道によると大臣の方は「今話し合っても溝が深くなるだけだ」「日本の安全保障をどう考えているのか。沖縄県のことを考えているのだろうか」と私から見ると高飛車な発言に聞こえた。

 沖縄県民に寄り添い、理解を頂けるよう努力したいという政府方針とはほど遠く、会えないことが政府と沖縄の溝をさらに深くしたと思う。

 普天間基地の5年以内の運用停止の定義について、大臣は3月の安全保障委員会で「飛行機が飛ばないこと」と答弁した。しかし、4月24日には「幻想を与えることは言うべきではない」とあっさり撤回した。仲井真前知事とは、運用停止で政府とやりとりしたが、合意されたわけではないとも答弁している。

 5年以内の運用停止は前知事の埋め立て承認の大きな柱で、前知事は官房長官も総理も約束したことが最高の担保と言っている。ぜひとも空手形にならないよう、しっかりと対応してもらいたい。

 このようなことの積み重ねが、日本国民全体で日本の安全保障を考え、負担すべきだという努力を怠り、戦後70年たっても沖縄に負担させる、辺野古が唯一の解決策ということでしか、日本の安全保障を語れない。そういった日本の政治の中で、沖縄があえぎ、苦しみ、自己決定権を強く主張するゆえんとなっている。

 私は2年前、参院予算委員会の超党派メンバーが来県した際、基地所在市町村の首長として意見交換した。その席上、普天間の県外移設に話が及ぶと、自民党の議員が大きな声でこう言った。「本土が嫌だと言っているのだから、沖縄が受け入れるのは当たり前だろ。不毛な議論はやめようや」。こういう国会議員と私はどうやって日本の安全保障を議論できるのか、と絶望感があった。

 あらためて言うが、沖縄は自ら基地を提供したことは一度もない。戦後、米国に銃剣とブルドーザーで強制的に接収され、今日に至っている。海兵隊ももともと沖縄に居たわけではない。本土に居たのが60~70年前に沖縄に移ってきた。

 自ら奪い、普天間基地が老朽化したから、世界一危険になったから、新辺野古基地に移設する。嫌なら代替案を沖縄側が出せと言う。この考え方のどこに自由と民主主義、人権という価値観を共有する国々との約束を実現する資格があるのかどうか。沖縄の視点から強く感じている。日米安保体制、日米同盟はもっと品格がある、世界に冠たる、誇れるものであってほしいと心から願っている。

 沖縄県では昨年の一連の選挙、名護市長選、沖縄県知事選、衆院選沖縄選挙区で新辺野古基地建設反対の候補者を当選させた。これが沖縄県の民意である。

 中谷大臣に具体的なお願いが二つある。

 一つは沖縄から見ると、どんなに米軍が事件・事故を起こして、その都度、県や市町村、議会が防衛局で意見や抗議しても、残念ながら防衛局には当事者能力がない。能面のように「この件は米軍に伝えたい」というのがほとんど。

 日米地位協定の最前線にいることはそういうことであって、沖縄だからこそ現実に見えてくる。

 他の都道府県の首長同様、子どもやお年寄り、まちづくりのために全力を尽くしたいが、基地に時間が割かれすぎる。知事就任して約5カ月、仕事の8~9割は基地。それ以外に経済、福祉、教育を触る時間がない。基地問題だけで知事職を全うしていると思うぐらいだ。

 せめて事件が起きたときは防衛局長をはじめ、職員が県や市町村に出向き、説明し、私たちの意見を聞いてほしい。軍転協の多くの首長も言っていた。検討してほしい。

 二つ目は辺野古の岩礁破砕許可で、コンクリート製構造物の設置状況に関する調査について、外務省に速やかに立ち入り許可が得られるよう依頼している。沖縄防衛局でも適切に対応するようお願いしている。今日まで海上保安庁の船や防衛局の調査船、工事作業船が出入りできて、沖縄県の調査船が長期間入られない状況が続いている。まさしく理不尽で見えないところで現状が変更されているのではないか、と疑義さえ私たちに生じさせている。

 日米安保体制を理解している。私の政治の流れもそうだ。しかし、新辺野古基地が唯一の解決策という考え方に日米両政府が固執すると、日米安保体制に大きな禍根を残すと思っている。先程来、沖縄がいかに日本の安全保障のために重要かという話があった。

 考えてみると70年間、冷戦構造時代から今日に至るまで沖縄は重要な「要(かなめ)」といわれ続け、なんらそれに変化がない。強調されたことも冷戦構造時代より本当にそれが脅威になっているのか、安全保障に重大な危険性があるのか、グローバルな安全保障、積極的平和主義ということで、ある意味で中東まで視野に入れた日米同盟、日米安保体制となると、その中にも沖縄が位置付けられると、沖縄はいつまで世界中のそういったものに用立てなければ、私たちは進んでいけないのかどうか、この辺のところが先ほどの説明で現状は分かるが、過去はどうか、先々はどうなのか。70年間は預かってきたが、これから以降も70年間預かるのか、その辺が明確ではないので先ほどの説明に納得できない。

 辺野古に新基地を建設するのは不可能である。沖縄県として絶対に反対したい。

 このまま日本政府が地元の理解を得ることなしに辺野古の新基地建設が途中で頓挫することが起きれば、全て政府の責任と思っている。防衛大臣の尽力で政府の新たな英断を心から期待している。

 かたくなな固定観念から脱して、辺野古の新基地建設を中止することを決断し、私たちとの話し合いを継続してほしい。

 私もアジアの中における沖縄の存り方、日本の安全保障は日本国民全体で考え、負担すべき。その努力を本土の政治家が地元の方々に自分の命を懸けて「みんなで守ろうよ」という話をしたことがあるのか。

 先ほどの参院予算委員会の一人が「本土が嫌だといっているから、沖縄が受けるのは当たり前だろう」と言ったように、そういった中で日本の安全保障を語ったら、私たち沖縄県民は今後とも大きな命題の中で生きていかなければならないのか、切ない、寂しい思いがある。この気持ちを理解いただき、今後に生かしてほしい。