中谷元・防衛相は翁長雄志知事との初会談で、中国の南西海域での活動を念頭に、沖縄の地理的優位性を殊更に重視する姿勢を見せた。在沖米軍の抑止力を維持した上で、普天間飛行場の危険性を除去するには「辺野古移設が唯一の解決策」と論理付けた。しかし、「中国の脅威」に対し普天間を利用する海兵隊の直接的な任務や役割には触れていない。なぜ沖縄で基地をたらい回しにするのか-という疑問にも答えていない。

 中谷氏は、中国軍機を対象とした航空自衛隊機の緊急発進(スクランブル)が5年間で5倍近くに増加し、尖閣諸島周辺への中国公船の領海侵入が毎月10回ペースで起きていることを説明。「中国の脅威が増大」→「米軍の抑止力が必要」→「普天間の機能は辺野古へ」と順番に並べた格好で、一見分かりやすい。

 ただ空軍や海軍に比べ、「海兵隊が沖縄に駐留する軍事的な合理性はない」という見解が、森本敏元防衛相ら軍事専門家の間でも出るようになった。海兵隊の上陸作戦に必要な強襲揚陸艦は、長崎県佐世保市の海軍基地に所属しており「地理的優位性には偽りがある」と指摘されている。

 海兵隊の駐留や普天間を県内に移設する根拠が乏しくなる中、翁長氏は戦後70年間、過重負担を強いられてきた沖縄に、普天間の代替施設をあえて造ることに疑問を投げ掛けてきた。

 会談では「冷戦時代から沖縄の位置は重要と言われ続け、辺野古の新基地が完成すれば今後70年間も基地を預かるのか」と述べ、納得できないと声を荒らげた。

 政府の方も、辺野古移設の説明の中で「海兵隊の持つ抑止力」ではなく、「日米同盟の抑止力維持」という言葉を用いるよう変化している。辺野古移設そのものだけではなく、日米で約束した辺野古移設を実現することが「日米同盟」には不可欠で抑止力維持につながるという考えだ。

 必ずしも軍事上の合理性があるわけではない。にもかかわらず、他に移設先を探せないという政治的な事情を隠すために、地理的優位性を理由に辺野古移設に固執する政府の姿勢が、県民の反発と混乱を招いていると言わざるを得ない。(政経部・福元大輔)