自民、公明両党による与党協議が開かれ、安全保障法制の関連法案に正式に合意した。集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の海外派遣を拡大するもので、戦後日本の安全保障政策の大転換である。

 与党が合意したのは、安全保障法制を構成する11法案の内容。自衛隊が他国軍を後方支援するための恒久法「国際平和支援法案」と、自衛隊法、周辺事態法、武力攻撃事態法など計10本の現行法の改正一括法案である。14日に閣議決定し、国会に提出する見通しだ。

 昨年7月の閣議決定で、安倍政権は、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認に踏み切った。日本の存立が脅かされるなど一定の要件を満たせば、他国に対する攻撃でも集団的自衛権の行使を認める。その法制化に向けて、政府・与党が、国会手続きに入ろうとしているのである。

 しかし、少人数の与党議員だけで進めてきた安保法制の協議は、国民にはまったくほど遠いものだった。

 武力攻撃事態法改正案は、集団的自衛権を使えるようにするため新たに「存立危機事態」という考え方を導入。「我が国の存立が脅かされる明白な危険」など三つの要件を満たしたときには日本が武力攻撃を受けていなくても他国のために武力行使ができるようにした。

 安倍晋三首相は日本の原油が通過するホルムズ海峡の封鎖は存立危機事態に当たるとして、機雷掃海が認められるケースだと主張する。しかし、公明党との解釈の違いは残ったままだ。

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 周辺事態法を抜本改正する「重要影響事態法案」は、日本周辺という地理的制限を外し、自衛隊の世界規模の派遣拡大に道を開くものである。

 政府が「日本の平和および安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)と判断すれば、地球上のどこにでも自衛隊が派遣できるようになる。さらに米国以外の国にも支援対象を広げており、自衛隊の活動範囲は際限がなく広がる恐れがある。

 新設する恒久法「国際平和支援法案」は、自衛隊派遣の「歯止め」として、国会の事前承認を例外なく義務づけた。

 ただ、国会の事前承認が得られない場合でも、周辺事態法を改正する「重要影響事態法案」を適用すれば、国会の事前承認なしで自衛隊を派遣できる内容だ。これでは抜け道をつくったようなもので十分な歯止めにはなっていない。

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 安倍首相は、先の訪米の際、日本の首相では初めて米連邦議会の上下両院合同会議で演説した。その場で安倍首相は、自衛隊と米軍の協力関係強化に触れ、集団的自衛権の行使を可能とする安保関連法案を「この夏までに成就させます」と宣言した。

 国会に法案を提出すらしておらず、与党の正式合意前である。甚だしい国会無視であり越権行為と言わざるを得ない。国会では、法案審議はもとより、国権の最高機関である国会に対する安倍首相の姿勢を厳しく問いただすべきである。