多くの人がひしめく暗い色の絵からあふれてくるのは苦痛なのか、悲嘆なのか-前に立つと、言い知れぬ怖さを感じる。丸木位里・俊夫妻の作品「チビチリガマ」だ

▼沖縄戦で、捕虜になることを禁じられ追い詰められた人々が「集団自決(強制集団死)」で命を奪われた。正面に向けられた瞳のない目、子どもを抱え込んで倒れた女性、倒れた人の傍らには刃物のようなもの、明るい所に向かおうとする赤子を抱いた女性、折り重なり合う人々…。軍隊は住民を守らず、戦争は人間をこれほどまでに痛めつける

▼「読谷村三部作」として「シムクガマ」「残波大獅子」と並んで、読谷村立美術館で展示されている。日ごろは宜野湾市の佐喜眞美術館にあり、読谷村の人々がモデルだが、村内での展示は初めて

▼同時に「しまくとぅばで語る戦世・読谷編」上映と比嘉豊光さん撮影の写真の展示もある。「戦後70年・沖縄美術プロジェクト」の読谷プロジェクトの一環。17日まで

▼胸に響く作品が、その生まれた土地で鑑賞できる良い機会になる。若い世代に見て知って、感じてほしい。そのためにも、作品の意図や背景が分かりやすくなる説明があれば、なお良かったと思う

▼戦争への道を開く新たな安全保障法制が整備されようとしている今、戦場の無残さを心に刻みつけておきたい。(安里真己)