現在、日本人の2人に1人が一生のうちにがんに罹患(りかん)しています。がんは国民病とまで呼ばれ、対策が急がれている病気です。国のがんに対する政策は、がん対策推進基本計画に沿ってなされています。この計画が2012年に一部改訂され、子供へのがん教育を進めるという目標が明記されました。

 がんの診断・治療が遅れる理由として、がんに対する無関心や、逆に強すぎるマイナスイメージがあると考えられること、またがん患者への理解不足による根拠のない偏見が問題として考えられます。がんに対する理解が不足している例としてがん患者の就労の問題があり、がんと診断されると仕事ができる状況かどうかにかかわらず、被雇用者の3人に1人は仕事を失っていたそうです(04年厚生労働省)。

 多くのがん患者が失業することは、本人にとっても社会にとっても大きな損失となります。そこで子供のうちからがんについての正しい知識を身につけることで、将来がんにかかっても皆が生活しやすい社会をつくることが可能になると考えられます。

 昨年度は近所の小学校の5年生の児童に、がんについての講義を行いました。読み聞かせの時間でしたので1回10分程度、約30人の児童を対象とし、順にクラスを回りました。

 小学生でもやはり、がんは怖いというイメージを持っていました。必ずしも治らない病気ではないことを伝え、どうしたらがんで死なずにすむと思うか質問しました。児童たちからは「早く見つければよい」との意見があがりました。がん検診は症状が出ないくらい小さい時期のがんを見つけることができる可能性があり、疾患によっては効果の上がりやすい対策方法です。

 また、いくらかがんを予防できる方法があることも伝え、がんの原因として最も影響するものは何と思うか聞いてみると、ほぼすべてのクラスで「タバコの煙」があがりました。お父さんお母さんにはタバコは吸わないでほしい、という意見が少なくなく印象的でした。

 今回の講義ではすべてのクラスで、家族に検診受診を勧めるようお願いして終わりました。後に行ったアンケートの結果、約6割の児童は家でがんのことを話題にし、半数以上が検診を勧めてくれていたことが分かりました。

 子供たちの未来が、がんによって悲しいものにならないよう、がん教育にかかる期待は大きいものですが、実際はまだ始まったばかりです。今後の広がりに期待しています。(浦添総合病院・宮里 恵子)