新たな安全保障法制の整備に向け安倍政権は、関連11法案を国会に提出した。これを受けて与野党の国会対策委員長が会談。与党は19日に特別委員会を設置し、21日に審議入りするよう提案したが、野党は早急な審議入りに反対し、日程調整は来週に持ち越された。

 戦後歴代の内閣が、憲法9条の下では認められないとしてきた集団的自衛権が行使できるような内容を盛り込んだ重大な法案である。野党が早急な審議入りを拒否したのは当然だ。憲法9条に基づく専守防衛は、戦後日本の「国是」であった。それを突き崩す恐れのある法案が国会に提出されたこと自体、重大な問題である。

 国会に提出されたのは、既存法10本の改正法案を1本に束ねた法案と、他国軍を後方支援するため、いつでも自衛隊を海外派遣できる新たな恒久法の計11本。これだけ「巨大な法案」を一挙に提出するのは、あまりにも乱暴で度が過ぎている。

 自民党は衆院での審議時間を「80時間程度」と説明したというが、これもとんでもないことだ。

 そもそも憲法で禁じられているものを法律でできるようにしようというのは、憲法が国家権力を縛る「立憲主義」の根幹を揺るがすものだ。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は「戦争の放棄」をうたった憲法9条の規範力を否定する。これだけ問題の多い法案であるにもかかわらず、安倍晋三首相が米議会で「夏までの成就」を約束したのは、国会を軽視したおごりの表れというしかない。法案の拙速審議は到底許されない。

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 安倍首相は14日の記者会見で、野党から「戦争法案」との批判が出ていることに対し、「無責任なレッテル貼りは全くの誤りだ」と批判した。

 しかし、武力攻撃事態法改正案は、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」場合を「存立危機事態」と定義し、日本が直接攻撃を受けていなくても武力行使ができるようにするものだ。

 安倍首相が「無責任なレッテル貼り」と頭から決めつけるのは、国民の疑問を封じようとするもので、その姿勢こそ疑問だ。首相が集団的自衛権が行使できるとする中東・ホルムズ海峡の機雷掃海は、停戦前なら武力行使に当たるとの認識もある。

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 政府・与党は、集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」の定義に「武力行使の新3要件」を明文化し、自衛隊派遣の恒久法に「国会の例外なき事前承認」を要件とするなど「歯止め」がかかっているというが、戦争に巻き込まれるリスクは確実に高まる。

 安倍首相は、法整備と日米同盟強化で「抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなる」との認識を示した。

 中国を想定した発言だとみられるが、冷え切った日中関係を改善せずに軍事力に頼ろうとするのは相手の軍備増強を招き、かえって抑止力を低下させる恐れがある。