◆沖縄そば29杯完食を目指す物語です。

 前回(1~3杯4~6杯7~10杯10~15杯15~20杯21~24杯)からの続き。

 23・24杯目のはしごそばから2日後の8月30日。残すところあと5杯。いよいよゴールが見えてきた。

 これだけ食べ続けてきたにもかかわらず、いや食べ続けてきたからだろうか。29日の夕方あたりから、そばがとにかく食べたかった。ほか弁でも天丼でも、コンビニ飯でもファストフードでも世の中にあるどんな食べ物でもなく、「そばが食べたい」という心からの純粋な気持ちに驚いた。

 「わたし、そば好きなんじゃね?」と。

【25杯目】感動とハプニングが入り交じる…「ツバメ」

 その思いを確かめるべく、昼のバイトが終わるやいなや公設市場のエスカレーターを昇る。今月8回目となるはしごそばは、公設市場ゾーンの残り2店舗にしぼる。

 1杯目は「御食事処ツバメ」にした。店の入り口に大きなメニューの立て看板があるが、それを見る余裕もないまま真っすぐ席を目指す。

 店内は中国人とみられる観光客でいっぱい、店員さんも中国人の様子。日本語がまったく聞こえてこない中、メニューにあるソーキそば小を指して注文する。

骨付きソーキが魅力的な「御食事処ツバメ」。かぶりつくのが正しい食べ方。

 異国の言葉だけが浮かぶ店内で1日ぶりに食べるそばは、小と言うには大きめのサイズ。ほぼ透明な出汁を覆う油膜から、豚骨の存在を感じたがお味はあっさり。25杯目で初の骨付きソーキに、周りの目など気にせずかぶりつく。薄く切られているが大きめのかまぼこ、ネギと紅ショウガ。一口食べるごと、体に染み渡っていくのがわかる。

 1日ぶりのそばとの再会は感動するほどおいしくて、「そばが好物」と名乗れるぐらいいとおしい食べ物であることを体が自覚し始めていた。そばと私はもはや一体化して、離れられない運命に変わりつつある。毎日食べるとありがたさは薄れていたが、「1日我慢したことで、こんなにおいしいなんて♡」とそばの魅力を再発見した1杯目であった。

お客さんも従業員も外国人が多い

 そんな感動のソーキそばを完食してレジに向かう。会計の後にゆっくる新聞を広げてスタンプをお願いすると、「チョットマッテテ。スタンプナクシタ。デモ、ダイジョウブ!」と店員さんから片言の日本語で説明を受ける。

 どうやらスタンプラリー専用の印鑑(猫の足跡をモチーフにした肉球印)をなくしたようで、店の印鑑で対応すると事務局に説明したと話してくれる。「念のため、もう一度事務所に行って許可をもらってくる」と言い残し、ひとりの店員さんが走り去る。「肉球印じゃないと失格だったらどうしよう、インチキしたと思われないだろうか…」。そんな私の心の声や不安げな様子を察してか、店員さんたちが私を囲み、「(スタンプが)コンナニタクサン、ミタコトナイ」「イマナラダイジョウブ、ガンバレ」などと褒めたり、応援してくれたりしている。

 「それよりもスタンプだ、そんな言葉で不安が消えるはずないじゃんか、何でなくすんだよう」と、心の中で不安は止めどなくあふれてくる。

肉球スタンプに囲まれる「ツバメ」の印

 そこへ店員さんが戻ってきて、店の印鑑とツバメのゆっくる新聞に記載されている店舗番号を書き込み、「ホラ、ダイジョウブ、ガンバレ」と言って送り出してくれた。

 残り、あと4杯。私は必ずやり遂げる。その決意を新たに、ひとつだけ肉球印でない、25杯目となるツバメを後にした。

〈筆者・たまきのそばデータ〉
・店名:御食事処ツバメ(那覇市松尾2-10-1第一牧志公設市場2階、電話098-867-8696)
・メニュー:ソーキそば小500円(正午にまたもや社長とカレーを食べた私だったが、1日ぶりのそばの感動的なおいしさにより余裕で完食できるサイズ)
・雰囲気:午後3時を過ぎても、外国人観光客でにぎわう。周りが気にならないなら、席が空いている瞬間に滑り込んでしまいましょう。ソーキそばは骨つきなので、人前でかぶりつけないあなたは、沖縄そばをお勧めします。