企業が長期にわたり派遣労働者を雇用できるようになる労働者派遣法改正案が、衆院厚生労働委員会で審議入りした。現在は原則3年となっている派遣労働者受け入れ期間の上限をなくすのが最大のポイントだ。

 今国会ではさらに、一部の専門職を労働時間規制の対象外とする労働基準法改正案の審議も控えている。

 いずれも、労働者を守ることよりも、企業の意向を優先した法改正だと言えよう。雇用の不安定化や長時間労働の拡大につながる懸念が拭えない。

 現在の派遣法は、秘書や通訳など専門性の高い26業務については派遣労働者受け入れの期限がないが、その他の一般業務は最長3年までしか派遣できない。正社員よりも賃金が安い派遣労働者への置き換えを防ぐためだ。

 改正案は、専門と一般の業務区分をなくし、3年ごとに働く人を替えれば派遣労働者を受け入れ続けることができる。

 つまり、企業にとっては、派遣労働者の「使い勝手」が良くなる、という訳だ。

 一方、労働者の立場で見れば、同じ職場で3年を迎えると原則、職場の変更などを余儀なくされる。そのため改正案には、派遣会社に対し、派遣先の社員として直接雇うよう依頼するか、別の派遣先の紹介、計画的な教育訓練などを求める雇用安定措置が盛り込まれた。

 政府、与党は「正社員への道を開く措置」と胸を張る。だが、その保障があるわけではなく、実効性は疑わしい。

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 厚生労働省によると、派遣労働者は2014年度で約120万人。仕事の減少など企業の都合で切りやすい「雇用の調整弁」となりがちだ。リーマン・ショックによる景気悪化時には、「派遣切り」が社会問題化した。

 厚労省の調査では、派遣で働く人の43%が正社員雇用を望んでいる。だが、派遣を含む非正規雇用歴が長引くほど、正社員への道は険しいのが実態だ。

 派遣法改正案は、条文の誤記などで昨年の通常国会、続く臨時国会でいずれも廃案となった。与党は今回、「三度目の正直」として採決強行も辞さない構えだ。

 しかし、法改正によって、正社員から派遣への置き換えが進み、非正規雇用が拡大する恐れが強い。当事者からは「会社の備品を買い替えるように、働き手も3年ごとに替えていくのか」などの批判も出ている。

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 労働基準法改正案の柱は、一部の専門職を労働時間規制の適用除外にする「高度プロフェッショナル制度」の新設である。成果で賃金が決まるため時間に縛られずに働けるというが、長時間労働への歯止めは十分ではない。働き過ぎが懸念される「残業代ゼロ」制度に他ならない。

 安倍政権は、成長戦略の一環として労働分野の規制緩和を掲げるが、労働者を軽んじ過ぎてはいないか。「多様な働き方の実現」と言うのであれば、いずれの法案も当事者である労働者の声に耳を傾け、審議を尽くしてもらいたい。