「米軍が攻めてくる」と、米国民であるテキサス州の一部の人々が心配しているという。しかも真剣に

▼すんなり飲み込めないのだが、米メディアによると話はこうだ。グリーンベレーなどの特殊部隊が7月から2カ月間、周辺で大規模訓練をする。これが実はテキサスを制圧して戒厳令下に置く連邦政府の秘密作戦なのだという説が、インターネットで広まった

▼なぜ連邦政府が自国を「攻める」のか。「市民から銃を奪うため」「中国に操られている」などと説明された。ここまでならよくある陰謀論にすぎない

▼ところが、不安の声を受け、アボット州知事が米軍訓練の監視を州兵に命じ、話が大きくなった。命令書でも「安全や財産権、市民的自由の侵害」への懸念に触れた。カーター国防長官が、会見で陰謀を否定せざるを得なくなった

▼州兵が監視すると言っても、武装して対峙(たいじ)するわけではないようだ。ただ、軍事組織の利用は「力による対抗措置」の色彩がある。一時独立国だった歴史を持ち、連邦敵視、自主武装の風潮が根強いテキサス市民の一部からは、称賛の声が上がった

▼ネット上では威勢のいい意見が喜ばれる。それが現実政治を動かした。不安をあおるネットの病理。軍に軍で対抗するという武力信仰の不毛。テキサスの光景は異様だが、人ごとには思えない。(阿部岳)