県出身歌手の安室奈美恵さん(40)が、来年9月16日に引退する意向を表明した。1992年のデビューから25年間、沖縄はもちろん日本を代表し第一線を走り続けてきた歌手の突然の引退発表は、衝撃を与えた。

 安室さんの快進撃は95年、ソロ活動開始と同時に始まった。出す曲が大ヒットし、細眉にミニスカート、厚底ブーツというファッションをまねする「アムラー」が街にあふれた。翌96年にはシングル「Don’t wanna cry」で日本レコード大賞を初受賞。当時19歳での受賞は史上最年少だった。

 人気絶頂だった97年には突然、ダンサーのSAMさんとの結婚、妊娠を発表して世間を驚かせた。日本の芸能界では、若い女性歌手の結婚や出産が、長くタブー視されていたからだ。

 しかし安室さんの堂々とした姿は、特に10~20代の女性に受け入れられ、同時期の曲「CAN YOU CELEBRATE?」は結婚披露宴の定番曲ともなった。

 出産のための1年間の休業後も華麗に復帰。完成度の高い歌とダンスの、変わらぬパフォーマンスで聴衆を魅了し続ける姿は、仕事と育児の両立の「お手本」ともなった。

 楽曲にとどまらず、ファッションや生き方が国民の心をつかむ、文字通り「スーパースター」の道を歩んできた。

 90年代後半、「目指せ、第二の安室奈美恵」と、県内各地で子どもたちのダンスレッスンが開かれた。安室さんを育てた県内のタレント養成学校の歌手育成手法は、全国から注目を浴びた。

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 そんな安室さんのスタイルの源流に見えるのが、伝統音楽や民謡とは違ったもう一つの沖縄らしさだ。

 少女らしいアイドルが東京の音楽シーンを席巻する中、デビュー当時から、R&Bやヒップホップの要素を含んだ安室さんのパフォーマンスは、かっこよくて異質だった。長い間、米軍統治下にあって、したたかにアメリカ文化をも吸収してきた「沖縄スタイル」が見て取れる。

 安室さん以降、MAXやSPEED、DA PUMPなど、沖縄スタイルのグループが次々と登場。県出身の若者が本土のサブカルチャーでメジャーとなる姿は、沖縄の若者たちに自信を与えた。

 ライブではめったに語らないという安室さんから、沖縄への思いを聞く機会は少ない。しかし引退発表直前の節目のライブを沖縄で開催するなど、古里への思いは確かに感じ取れる。

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 幼いころの周囲の評価は「おとなしくてまじめ」。そんな自身の性格を、責任感が強く、負けず嫌いと分析する。口パクを嫌い、「息切れしても、音程が外れても、絶対に歌い通したい」というこだわりを実践した25年だった。

 突然の引退表明には、そうした「強い」安室さんの「強い」意向があるに違いない。

 公式サイトでは「長年心に思い、この25周年という節目の年に決意した」とある。引退までの1年、最後まで全力疾走する姿を楽しみにしたい。