最近、正月に晴れ着姿を見かけることも少なくなった。コンビニやスーパーは三が日も営業し、連休に旅行する人も多い。もはや年明けは「特別な祝日」ではないのだろう

 ▼一方で結婚式や入学式と、人生の節目やハレの日には、スーツなどの一張羅で臨む。あふれる期待や希望、また神妙な面持ちでその日を迎える真摯(しんし)な思いを、正装という形で示す

 ▼米軍占領下の1968年、初の主席公選で県民が自らの行政リーダーを選んだ日は、多くの人が正装で投票所に向かった。教え子に支えられながら膝立ちで投票用紙に書き込み、背負われ一票を投じる正装の男性が22日紙面で紹介された

 ▼沖縄師範学校の元教師、嘉数弘栄さん=享年93=は、主席公選で勝利した屋良朝苗さんの恩師。復帰を掲げた教え子の当選に安堵(あんど)し、復帰を見届け亡くなった。身なりを整え、襟を正して、沖縄の民主主義の始まりに希望を託した

 ▼日米政府に翻弄(ほんろう)され続けた人々にとって、どれほど特別な日だったかと胸が熱くなる。小さな用紙に沖縄の未来をかけた彼は、基地の減らぬ現状をどう見ているだろう

 ▼写真からは、だれにも強制されず、自らの意思で選び示すことの重みが伝わる。わずか47年前のウチナーンチュの心に触れ「行っても行かなくても同じ」という昨今の投票率の低さを考えた。(儀間多美子)