安全保障関連法案の国会審議が始まった。26日の衆院本会議での代表質問、27日の衆院平和安全法制特別委員会での審議-2日間の論戦を通して浮かび上がったのは、「平和安全法制」という政府のネーミングとは裏腹な法案の危険であいまいな性格である。

 憲法9条は集団的自衛権の行使を認めていない。にもかかわらず安倍政権は、閣議決定によって憲法解釈を変更し、新3要件の下で集団的自衛権の行使を可能にする法案を国会に提出した。

 新3要件の柱は「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」という状況である。 政府はこれを「存立危機事態」と呼んでいるが、この文言から国民はどのような事態をイメージできるだろうか。

さまざまな解釈が可能な、あまりにも漠然とした文言だ。 法案の中に判断基準は示されていない。

 機雷掃海は国際法上、武力の行使に当たるが、安倍晋三首相は中東・ホルムズ海峡での機雷掃海について例外的に認められる、との考えを明らかにし、「(中東地域では)他の例は念頭にない」と述べた。

 武力の行使に当たる機雷掃海を可能だとする法的根拠は何なのか。ホルムズ海峡での機雷封鎖がなぜ、新3要件に該当するのか。

 首相が「(集団的自衛権行使の)典型例だ」と指摘した日本近海での米艦防護についても、政府の言う抑止力向上とは反対の結果を生みかねない危険性を秘めている。

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 2日間の論戦を通して野党が強調したのは、自衛隊の活動範囲が地球規模に広がることによって、自衛隊のリスクが増大するのではないか、との懸念だった。

 特に、戦闘中の米軍に対する給油、弾薬輸送などの後方支援活動は、自衛隊が狙われ攻撃を受ける可能性を否定できないが、安倍首相も中谷元・防衛相もリスクの増大を正面から認めようとしない。

 法案は明らかに軍事協力を内容としているにもかかわらず、「国際平和支援法案」「平和安全法制整備法案」の名称が示すように意識的に「平和」や「安全」という言葉を使い、実相を覆い隠そうとしている。

 もう一つ気になるのは、自分と異なる意見に対する安倍首相の敵意むき出しの態度と決めつけ、何の根拠も示さずに断言・断定を繰り返すことである。「平和安全法制」か「戦争法制」かは国民が決めることだ。

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 27日から本格的な審議が始まった衆院の平和安全法制特別委員会は、45人の委員のうち自公が実に32人を占める。

 戦後の安全保障政策の大転換となる法案の審議は、国民の幅広い意見を丁寧に吸い上げること、少数意見を尊重することが重要だ。小会派を排除するような委員構成は好ましくない。

 安保関連11法案は、10の現行法改正案と1新法から成るが、現行法の改正案10本は、一本化して一括提出し、まとめて審議することになった。与党に都合のいい露骨な手法と言わざるを得ない。