安倍晋三首相は25日夕、記者会見し、臨時国会冒頭の28日に衆院を解散する意向を正式に表明した。

 なぜ今、解散なのか。代表質問も予算委員会質疑もせず、なぜ臨時国会の冒頭に解散するのか。安倍首相からは、納得できる説明は何一つなかった。

 2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる際、その使い道を変更し、国の借金返済から幼児教育の無償化などに振り向ける-。

 首相は「消費税の使い道を見直す以上、国民に信を問わなければならない」と解散の理由を説明した。

 高齢者への給付が中心だった社会保障制度を「全世代型」に転換する、との考えも示した。それ自体、突っ込んだ議論が必要な大きな改革だ。

 ここには、政策転換の善しあし以前に、重大な問題がある。

 消費増税分の使い道変更について自民党はこれまで、ほとんど党内議論をしていない。自民党の竹下亘総務会長でさえ記者団に「党で1回も議論していない。公約は総務会で了承してから出すもの」だと語ったほどだ。

 本来であれば、臨時国会で政府の考えを丁寧に説明し、野党との論戦を通して国民に分かりやすい形で論点を提示するのが筋だ。

 だが、首相は「今なら(多少議席は減らしても)勝てる」との判断を優先し、議会政治にとって最も大切な手続きを割愛した。有権者を置き去りにした究極の自己都合解散というしかない。

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 「消費税率引き上げの際に使途を拡大し、教育目的にも使えるようにする」という考えは民進党の前原誠司代表が以前から掲げていた政策である。

 首相が打ち出した使い道の見直し案と大きな違いはない。そうであればなおさらのこと、臨時国会で議論し、内容を詰めていくべきであった。1カ月足らずの短期決戦の選挙戦で、果たして有権者に判断材料を示せるかどうか疑問である。

 20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するという財政健全化目標について首相は「困難になる」との見通しを明らかにした。

 安倍政権は財政健全化にどう取り組むつもりなのか。その説明が不十分だ。

 共同通信社が23、24両日に行った全国電話世論調査で、森友学園、加計(かけ)学園問題を巡る政府の説明に78・8%が納得できないと答えている。

 憲法に基づく野党の臨時国会召集要求をずるずる引き延ばし、挙げ句に、何の議論もせずに冒頭解散である。

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 北朝鮮の核・ミサイル開発については、あらためて「対話より圧力」との考えを強調した。

 国民の中には選挙による政治的空白を懸念する声が多い。「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅しによって左右されることがあってはならない」との首相の説明は、解散を正当化するためのこじつけにしか聞こえず、「なぜ今、解散が必要なのか」の説明にはなっていない。