他人が吸ったたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」の害を受けずに、料理やお酒を楽しみたい人に、全席禁煙の居酒屋が県内で人気を集めている。料理にこだわる店が多く、「きれいな空気の中で、おいしい料理を味わえる」と好評だ。31日は世界禁煙デー。(学芸部・高崎園子)

オープン当初から全席禁煙の「創作&銀串こぱん」。壁にやにもつかず店内もきれい=那覇市金城

「居酒屋けん」は、禁煙とともにうまみ調味料などを使わないこともこだわり=那覇市久米

4月から全席禁煙にした「しゃぶしゃぶ温野菜那覇小禄店」は家族連れが多い=那覇市鏡原

オープン当初から全席禁煙の「創作&銀串こぱん」。壁にやにもつかず店内もきれい=那覇市金城 「居酒屋けん」は、禁煙とともにうまみ調味料などを使わないこともこだわり=那覇市久米 4月から全席禁煙にした「しゃぶしゃぶ温野菜那覇小禄店」は家族連れが多い=那覇市鏡原

■おいしく食べてほしい [こぱん]

 「料理をおいしく食べてもらいたいというのが一番の理由だった」

 那覇市金城にある全席禁煙の居酒屋「こぱん」店長の渡真利良二さん(54)はそう話す。

 渡真利さんは元ホテルのフレンチレストランシェフ。安く、おいしいものを食べてもらいたいと6年前に店をオープンした。当時、禁煙の居酒屋はほとんどなく、酒造会社の関係者からは「居酒屋で禁煙はありえない。店をつぶす気か」と一喝された。

 実際、オープン間もなくは、半数の客が怒って帰った。ただ「健康志向の時代。禁煙のニーズが高くなる」と自信があった。

 徐々に、料理や禁煙目当てにやって来る客が増えていった。

 家族で月2回、夕食を食べに訪れる会社員の神谷繁さん(37)、愛美さん(31)夫婦は「ほかの居酒屋は、たばこ臭くて子どもを連れて入れないが、ここは安心」と満足げだ。

 繁さんは元喫煙者で「酒席でたばこを吸っている人を見るとつい吸いたくなる。ここには吸う人がいないので再発防止になる」。ゴルフコンペの打ち上げで訪れた会社経営の松田義次さん(68)らの8人グループは「店内の空気がきれいなので、料理をおいしく食べられる」「副流煙を吸わなくてすむ」「自宅に帰った時、臭いと言われない」と口々に話した。

■こだわり食材に評価も [居酒屋けん]

 那覇市久米にある「居酒屋けん」も3年前のオープン当初から全席禁煙にしている。店主の上間賢さん(50)はもともとヘビースモーカーだった。「完全禁煙の居酒屋は、たばこをやめたい人にとってすごく求められている環境ではないか。かつての自分が欲していた環境。皆さんの手助けになると思った」

 禁煙とともに、うま味調味料、食品添加物を一切使わないこだわり料理を目当てに来る客も多い。

 東京都の会社経営、矢田美樹(よしき)さん(52)は、出張で沖縄を訪れるたびに足を運ぶ。「完全禁煙の店は食材にこだわっているところが多い。禁煙以外の店には行かない」ときっぱり。

■煙の苦情で店長決断 [しゃぶしゃぶ温野菜]

 全国に338店舗、県内に5店舗を展開するフランチャイズの全国チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」。2年前にオープンした那覇小禄店はことし4月、全席禁煙に踏み切った。たばこの苦情が相次いだことから、那覇市内の3店舗を統括する店長の佐藤幸治さん(36)が決断し、本社の了解を得て実施した。

 店内は各席をカーテンレールで仕切っており、煙が隣の席に流れやすい。「料理はおいしかったが、最後までたばこの臭いが気になってしようがなかった」との苦情や、来店したが食べずに帰ったお客さんがいた。小禄店に寄せられたたばこに関する苦情は2年間で数百件。「今ではどの席に座っても、たばこの煙を気にせず、おいしいく食べていただける」と佐藤さん。

 3月に開店した那覇新都心店も全席禁煙。ただし、苦情がなかった那覇天久店は禁煙の予定はないという。

■禁煙飲食店134軒 8年前の10倍に

 県健康長寿課によると、県の禁煙施設認定飲食店(敷地内または施設内完全禁煙)は2015年3月現在134軒。07年の14軒から約10倍に増えた。ただ「カフェやレストランに比べ、居酒屋はまだ少ない」として、県は認定店増に力を入れる考えだ。

 日本禁煙学会認定専門医の山代寛沖縄大教授は「受動喫煙の害に対する理解が広がり、客の要望が増え、店側も敏感になってきている。まだ少ないが、たばこを吸うのが当たり前だった居酒屋でさえ変わろうとしている」と分析した。