火口から立ち上る黒い噴煙は上空9千メートル以上にまで達した。火砕流は火口から全方向に流れ出て、一部は海岸にまで達した。とてつもない規模の自然の猛威である。

 鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)(屋久島町)の新岳(しんだけ)で29日、爆発的な噴火が起きた。気象庁は、噴火警戒レベルを5段階のうち、レベル3(入山規制)から初めて最も高いレベル5(避難)に引き上げた。

 屋久島町は、全島に避難指示を出し、住民ら137人全員が同日夕までにフェリーやヘリコプターで隣の屋久島に避難した。これほどの規模の噴火にもかかわらず、犠牲者が1人も出なかったのは何よりだ。

 住民らは、火山の島に住むリスクを自覚し、事前に避難場所や避難経路を決め、避難訓練を重ねてきた。噴火後の住民らの避難は迅速で、島外への避難もスムーズだった。しかし、突然の爆発的な噴火は、住民を恐怖に陥れた。取るものも取りあえず、着の身着のままで避難した住民もいる。

 屋久島の3カ所の避難所では、医師が巡回して住民の健康状態のチェックや、県や町の保健師が同行した「心のケア」も始めたという。

 火山噴火予知連絡会は、新岳の噴火活動が長期化することを踏まえ、住民の帰還時期を「最大で年単位になることも考えないといけない」との見解を出した。

 避難生活が長期間に及ぶ可能性もある。国や自治体は、住民に対して物心両面での手厚い支援に万全を期してほしい。

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 口永良部島は、九州南部から南西諸島にかけて活火山が集中する地帯にある。過去千年以内に複数回のマグマ噴火があったとされる。1933~34年の噴火では8人が亡くっている。

 昨年8月には34年ぶりに噴火し、気象庁は警戒レベルを3に引き上げ、観測活動を強化していた。今月23日には、震度3の地震が発生。同庁は「規模の大きな噴火に移行する可能性がある」と注意を呼び掛けたが、避難準備を示す警戒レベル4への引き上げは見送っていた。

 「有感地震が24時間以内に複数回起きる」など引き上げの基準を満たしていなかったのが理由で、気象庁が警戒レベルを5に引き上げたのは、噴火から約8分後だった。観測を強化していたものの、結果的に噴火前の住民避難には至らなかった。今回の判断を検証し、噴火警戒レベルの基準見直しを検討することも必要ではないか。

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 政府は、口永良部島で噴火が起きた29日、活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正法案を閣議決定した。改正法案は昨年秋の御嶽山(おんたけさん)の噴火を受けたものだ。

 改正法では、噴火の備えが必要な地域を国が指定し、火山ごとに市町村と気象台や専門家による防災協議会の設置を義務づけ、ハザードマップや避難計画の策定を求める。

 東日本大震災後、日本全国で火山活動が活発化しているとの研究者の指摘もある。火山防災に向けて、やるべきことはまだまだ多い。