国の誤った政策が引き起こした、ハンセン病の悲劇を伝える沖縄愛楽園交流会館(名護市)が1日開館した。人を人とも思わぬ、すさまじい人権侵害の事実をつまびらかにする歴史資料館だ

 ▼当初、会館名は「社会交流会館」だった。待ち伏せまでされ家族と引き離され、トラックや船で運ばれ塀の中に閉じ込められた人々は、園の外を「社会」と呼んだ

 ▼だが開館に向けて話し合ってきた委員らは、国が勧めた「社会交流会館」の名称から「社会」を抜いた。「何が、どこが社会なのか。中も外も平等なんだ」。同園自治会の金城雅春会長は語気を強める

 ▼同様の議論や葛藤は数多くあった。「静かに暮らしているのに」「なんで今さら」。さげすまれ、迫害され、息を潜めて生きざるを得なかった回復者から、歴史資料館という響きに不安が上がるのは当然だ

 ▼だが古里、戸籍、名前、明日を失い、授かった子を殺され、自殺や過酷な作業で仲間を亡くした人々の尊厳は、見えない形で今も奪われ続けている。「今、やらねば」の思いが実を結んだ

 ▼同園入所者の平均年齢は83歳。「忘れてはならぬ」「もうそっとして」。心は千々に乱れるが、消えゆく負の歴史を残す時間は少ない。今も心身の痛みに涙を流す人々が、それでも後世に伝え残す事実の重みを忘れてはならない。(儀間多美子)