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木村草太の憲法の新手(65)昨年参院選「合憲」判決 現在の合区、一部の県だけを犠牲に

2017年10月1日 15:06

 最高裁は9月27日、2016年7月に行われた参議院選挙における一票の格差は合憲との判決を示した。

 最高裁は過去に、10年参院選(5倍)と、13年参院選(4・77倍)の格差を違憲状態と判断した。これを受け、国会では選挙区割りや定数が見直され、15年に島根と鳥取、徳島と高知をそれぞれ合同選挙区とする公職選挙法改正がなされた。一票の格差は、改正時で2・97倍、選挙実施時点で3・08倍にまで縮小された。

 この選挙について、高裁レベルでは、全国16のうち10の高裁が違憲状態と判断していた。これに対して最高裁は、(1)人口の少ない一部の選挙区を合区するというこれまでにない手法を導入して行われたものであること(2)改正法はその“付則において”次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めていることを理由に、違憲状態とは言えないと結論した。

 しかし、この最高裁判決の理由付けは妥当でない。まず、(1)投票価値の不均衡の合憲性を判断するのに、格差是正の手法がこれまでにないものか否かを考慮要素とするのはそもそもおかしい。最高裁の言うことを真に受けると、例えば、「合区なしでの3倍」は違憲状態、「合区ありでの3倍」は合憲という不合理な帰結になりうる。

 また、(2)この付則があることは、現在の格差が、抜本的な見直しのために、引き続き検討が必要な状態にあることを国会が自白するようなものであり、格差合憲の根拠になりようがない。今回の選挙は違憲状態だとした東京高裁16年11月2日の判決も、この付則は選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の更なる是正が検討課題であることを明らかにしているものと指摘し、むしろ格差を違憲状態と評価する根拠としている。

 近年、最高裁は、衆議院選挙においては、おおむね格差が2倍を超えると違憲状態と判断してきた。このことは、高裁の過半数が違憲状態と判断したことにも一定の影響を与えているように思われる。最高裁が、今回の参議院選挙について3倍を超えているにもかかわらず合憲と評価するなら、衆議院選挙と参議院選挙とをなぜ区別するのか、具体的な説明が必要だろう。しかし、判決文に、その説明はなかった。

 合区となった4県では、ごく一部の県だけが合区対象とされたことに反発の声が強いと聞く。選挙法改正時には、22府県を11の合区とする案も提示され、その案ならば格差は1・83に収まったはずだというのだから、不満を持つのも当然だ。

 格差是正を重視するなら、参議院にも格差2倍未満を要求して、他地域の合区を促すべきだ。もしも、参議院に格差是正以外に尊重すべき事情があるとするなら、例えば、都道府県代表の要素を尊重するなら、すべての合区を解消すべきだ。今の制度は、日本中でたった4県にのみ、過度な負担を課している。

 最高裁の論理は、一部の県だけを犠牲にする現状を固定化しかねない危険なものだ。今後は、一票の格差是正とは別に、最高裁の論理そのものの是正も必要だろう。(首都大学東京教授、憲法学者)

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