4日の衆院憲法審査会に参考人として招かれた3人の憲法学者が、全員、集団的自衛権を行使可能にする安全保障関連法案を「憲法違反」だと言い切った。

 国会で審議中の法案に対し、与党推薦の参考人まで違憲との見解を示したのである。前代未聞の事態だ。

 自民党推薦の長谷部恭男・早大教授、民主党推薦の小林節・慶大名誉教授、維新の党推薦の笹田栄司・早大教授の3氏。

 毎日新聞によると、自民党は当初、佐藤幸治・京大名誉教授に出席を要請したが、断られたのだという。その佐藤氏は6日に東京で開かれたシンポジウムで講演し、こう述べている。

 「憲法改正は否定しないが、根幹を安易に揺るがしてはならない。土台がいつ、どのように変わるか分からないところで政治や司法を行えば、立派な建物が築けるはずはない」

 4人だけではない。法案廃案を求める憲法学者らの声明に5日午後時点で186人が賛同している。

 共同通信社が5月30、31の両日に実施した全国電話世論調査によると、安保法案に対し、47・6%が反対で、賛成の35・4%を上回った。安倍政権が国会で「十分に説明しているとは思わない」との回答は81・4%に上る。

 与党は国会の審議時間80時間を採決の目安としているようだが、とんでもない。この状況で数の力を頼りに強行採決するのは、専制政治と何も変わらない。法案を撤回して別の対応を探るべきだ。

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 衆院憲法審査会での違憲発言を受けて自民党の稲田朋美政調会長は、福井市での演説で「国の安全を守るのは憲法学者ではなく、私たち政治家だ」と力説したという。一見、もっともらしい主張だが、その発想は危うい。権力の乱用を防ぎ、憲法に基づいて統治する、という立憲主義を形骸化させるおそれがある。

 「集団的自衛権は行使できない」という従来の憲法解釈が、一内閣の判断で変更され、法律を制定することによって「行使できる」ようにすることは、立憲主義の土台を突き崩し、行政権を肥大化させかねない。

 一言で言えば、国会で審議中の安保法案は憲法の限界を超えるものである。法案をいくら読んでもさっぱり理解できないのは、無理なこじつけが多く、「事態」と名のつく分かりにくい表現が数多く使われているからだ。

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 「武力行使」の事態を想定している法案であるにもかかわらず、「平和」という言葉が多用され、「兵站(へいたん)」という軍事用語が「後方支援」という柔らかい言葉に置き換えられる。

 「抑止力の向上につながる」というが、その説明もあやふやだ。

 軍事力としての抑止力を向上させる試みは、相手の対抗措置を招き、軍拡につながる可能性が高い。抑止力の低下さえ懸念されるのだ。

 あれやこれやの不安、懸念、疑問に対し、安倍政権が丁寧に答えているとは、とても言えない。