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  • 中国は南沙諸島の岩礁埋め立てを中止し緊張緩和に努めるべきだ
  • 一方的な現状変更、実効支配の既成事実化は地域の安定を損なう
  • 日米と中国が軍事力を背景に対峙する構図を作ってはならない

 中国が進めている南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島の岩礁埋め立てをめぐり、緊張が高まっている。

中国が主張する九段線と南沙諸島、西沙諸島

 ドイツで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、岩礁埋め立てによる軍事拠点化を念頭に「威嚇や強制、武力行使、大規模な埋め立てを含むいかなる現状変更にも強く反対する」との首脳宣言を採択した。

 南沙諸島をめぐっては、ベトナムやフィリピンなども領有権を主張している。南シナ海は海上交通の要所で、石油や天然ガスも豊富とされるなど、資源的にも経済的にも軍事的にも重要な海域である。

 その南シナ海で中国は「九段線」と呼ばれる独自の境界線を設定し、海域の大部分の領有権を主張している。岩礁埋め立てについても「自国の主権の範囲内の問題だ」と強調している。

 しかし、領有権争いのある海域で、一方的に現状を変更し実効支配を既成事実化することは、国際秩序を乱し、地域の安定を損なう。中国は埋め立てを中止し、緊張緩和に努めるべきだ。

 南沙諸島にあるファイアリー・クロス礁と呼ばれる環礁では、3千メートル級の滑走路の原型が姿を現した。埋め立てた人工島の軍事利用を米国などが懸念する要因だ。

 中国が工事を中止する気配はない。人民解放軍の幹部は、埋め立てが軍事目的を含むと公言、先に発表した国防白書では「海上での戦闘準備」を強化する戦略を鮮明にした。中国の強硬一辺倒の姿勢は容認できない。

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 中国の動きに対し米国は対抗姿勢を強めている。カーター米国防長官は、先月シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、中国の南シナ海での岩礁埋め立てについて「地域における緊張の元凶だ」と激しく非難し「即時かつ永続的な中止」を求めた。軍用機による南シナ海への偵察態勢も強化している。

 日本の安全保障政策とも無縁ではない。米国は自衛隊の監視活動など南シナ海での日本の役割拡大に期待する。4月に改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、自衛隊と米軍の協力を地球規模に広げ、警戒監視活動も盛り込まれている。

 安全保障法制の議論でも南シナ海は重要な論点である。米軍などによる武力行使を自衛隊が後方支援する「重要影響事態」で想定される地域について、政府は南シナ海を否定しなかった。安保法制が整備されれば自衛隊が派遣され、紛争に巻き込まれるリスクが現実味を帯びてくる。

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 南シナ海では、日中間の偶発的衝突を回避する危機管理システムは整備されていない。日本は、関係国との対話の場に中国を引き込む外交努力を重ねるべきだ。

 中国と東南アジア諸国連合は、2002年に南シナ海問題の平和的解決を目指す行動宣言に合意した。紛争回避に向けた「行動規範」の策定も模索されている。日米と中国が軍事力を背景に南シナ海で対峙(たいじ)する構図を作ってはならない。日米中3カ国にとって南シナ海問題は最も重要で緊急な課題になりつつある。