【連載「働く」を考える】特別編 ジャーナリスト 竹信三恵子さん

 連載「『働く』を考える」はこれまで4部にわたり沖縄の労働実態を紹介してきた。労働問題に詳しい識者は沖縄の現状をどう見るか。非正規雇用など、長く労働問題を取材するジャーナリストで和光大教授の竹信三恵子さんに聞いた。(聞き手=学芸部・高崎園子)

生活できる賃金を保障する産業設計が必要と説いた竹信三恵子さん=東京都内

 −連載で伝えた内容をどう思うか。

 「沖縄固有の問題がすごく出ているのと同時に、日本全体に共通する労働問題が先行的に顕著に現れていると感じた。例えば沖縄では米軍基地がネックになって産業重視の政治・行政ができなかった。製造業を誘致してもらえず、サービス業や観光業に偏ってしまった。今、地方都市は多かれ少なかれ同じような状況になっている。1980年代、グローバル化で製造業が国外に出ていき、通産省(当時)が旗を振って観光業への転換が行われた」

 −給与水準は全国の8割、最低賃金(最賃)は最も低く、東京との格差が開いている。賃金の課題が大きい。

 「最賃が上がるたびに地域間格差が開くというのは全国的な問題だ。不利な条件の下、沖縄でそれが顕著に現れている。全労連の調査では生活費は全国的にあまり変わらない。地方都市は住宅は安いが、公共交通機関が少なく交通費が高い」

 「最賃は世界的に見ると全国一律が主流。同じ問題を抱える自治体がネットワークをつくって『全国一律の最賃にしよう』という運動を展開してはどうか」

 「全国的に大手企業はもうかっているが、内部留保をためて賃金として社員に下ろさない。それをはき出させる仕組みがない。最賃引き上げはそのための数少ない手段だ」

 −県内は非正規雇用率が44・5%で全国一高い。離職率、転職率も全国一だ。

 「人件費削減のために非正規化を進める動きは日本全国で広がっているが、地域の産業構造の問題も大きいかもしれない。観光産業は季節によって変動が大きく、どうしても非正規が多くなりがちだ。大事なのは、安定雇用と生活できるだけの賃金を保障できる仕組みの設計だ。実態調査をした上で、どんな仕事が可能かを調べ、これらを組み合わせて、例えば夏と冬で『二毛作』のような1年中食べていけるモデルをつくることはできないか」

 −国外の動きは。

 「例えば韓国は財閥と中小零細企業の二極化が著しい社会と言われるが、新政権で賃金格差解消に取り組んでいる。3千億円相当の莫大(ばくだい)な最賃対策費を計上し、零細企業に引き上げ分を補助する。フランスも体力の弱い企業に社会保険料減免などをしながら最賃を引き上げている」

 −県独自にできることはあるか。

 「一つは社会保障。賃金が安くても教育費、住宅費を公的に保障するなどの安全ネットがあれば豊さが生まれる。国のシステムづくりはもちろんだが、東京・世田谷では少子化で増える空き家を利用した若者向け低家賃住宅を提供する事業を行っている。自治体が持ち味を生かして工夫できるものもあると思う」

 「新しい安定をつくる沖縄の地域モデルをつくってみてはどうか。沖縄の持っているものを働き手のために生かすという視点から、地域の力を使って課題を解決することができれば、似たような悩みを抱える本土の地方自治体にとっても希望の星になる」

 【プロフィール】たけのぶ・みえこ 1953年、東京生まれ。朝日新聞編集委員兼論説委員などを経て、和光大現代人間学部教授。著書に「ルポ賃金差別」「ルポ雇用劣化不況」「しあわせに働ける社会へ」など多数。2009年、貧困ジャーナリズム大賞受賞