今から約45年前、時計の修理技術を競う全国大会で日本一になった比嘉利信さん(72)。今も一級時計修理技能士として、那覇市壺屋で「比嘉時計めがね店」を営み、針の止まった時計をよみがえらせている。6月10日は「時の記念日」。携帯電話の普及で腕時計の必要性が薄れ、安価なデジタル時計が使い捨てされる中、比嘉さんは「時計は思い出を刻むもの。もっと時計を大切にしてほしい」と話す。(吉川毅)

「時計は思い出を刻むもの」と話しながら修理する比嘉利信さん=9日、那覇市壺屋・比嘉時計めがね店

 比嘉さんは高校卒業後の1962年、那覇市の時計専門店に入社し、時計修理の技を磨いた。当時、「時の記念日」になると、国際通り沿いにあった店舗前に10人ほどの職人が並び、通りを行き交う人々の時計を正確な時間に調整し、不具合の修理を無料で行っていたという。

 「当時は、職人の数も足りなかった。時計もよく売れ華やかな時代だった。今は、職人も減り、多くの時計店も倒産してしまった」

 時計の世界に入って50年余り。本土復帰前年の71年、壺屋に自分の店を構え、これまでに数え切れないほどの時計を修理してきた。

 「時計のおかげで私の人生がある。私を頼って北部から修理を依頼する人がいる。生涯現役でやり続けたい」

 修理は個人依頼が主だ。卒業式のお祝いや記念日にプレゼントされた時計、親子3世代で使っている時計、そして親の形見として持ち続けている時計。それぞれの思い出が詰まっている。

 取材した9日は、5件の修理依頼があった。小さな拡大ルーペを右目に当て、何種類ものピンセットやドライバーなどを使い神経を集中させる。修理にかかる時間は、最短で1週間。部品調達などで最長3カ月かかることもある。

 比嘉さんは「年季の入った自動巻きや手巻きの場合、修理しても、秒針がずれたままで正確な時間を刻めないこともある。何でも急ぐ世の中で、その針を眺める時間も大切かもしれないと思う」と笑った。