災害時に警報や避難勧告、避難所の開設など必要な情報を住民に伝える災害情報共有システム(Lアラート)が、4月から県内で運用されている。災害の1次情報を発信する市町村、県などと、住民に直接情報を届けるマスメディアなどを結ぶ仕組みだ。今月4日には、初の合同訓練が行われ、各関係機関が参加。本格的な台風シーズンを前に、それぞれが活用法や課題を点検、システムとしての熟度を高めたい考えだ。(内間健)

訓練でLアラートに休校情報を送信する県教育庁保健体育課の職員=沖縄県庁

訓練に参加した市町村が発信した情報が次々と表示された沖縄タイムスのLアラートの画面

訓練でLアラートに休校情報を送信する県教育庁保健体育課の職員=沖縄県庁 訓練に参加した市町村が発信した情報が次々と表示された沖縄タイムスのLアラートの画面

■自治体以外からも発信 休校情報も

 LアラートのLはローカルの意味。県や市町村が、避難勧告や避難指示といった情報を、共有する基盤に発信する。総務省が推奨し、現在、全国で31都道府県が運用を開始、16県が準備中だ。沖縄県はことし3月に、地域防災計画にも活用を位置付けた。

 避難勧告や避難所を開設する市町村や、それらの情報を集約する都道府県、気象庁や消防庁などが情報を発信する。サーバー上に寄せられた情報をマスメディアや携帯電話などの事業者が、それぞれの手法で住民に向けて伝達する仕組みだ。

 県は運用に向けて2012年から3年間、約2億6千万円をかけて対応する防災情報システムを構築し、国が稼働させたシステムと結んだ。人的にも、各市町村の担当職員を対象に2月と4月に研修を開き、ことし4月から県内でのLアラートとして運用を始めた。

 沖縄は、全国で初めて公立学校の休校情報が県教育委員会から寄せられるのが大きな特色だ。ほかにライフライン情報として、沖縄ガスや離島航路の運航状況を知らせる沖縄旅客船協会が加入。沖縄都市モノレールや高速道路の通行情報も加入予定だ。

 総務省沖縄総合通信事務所の小鹿昌敏統括調整官は「沖縄は自治体以外の全国初の情報を出しており、見本的な取り組みをしている。今後はバスや航空機の運航情報、電力の停電情報が期待される」という。

 一方、情報を伝達するメディアなどは、それぞれの事業手法で伝える。新聞社は紙面やインターネット、携帯電話へ情報を発信。テレビ・ラジオなどの放送局は、テレビのデータ放送やラジオの緊急放送を流す。携帯電話事業者は携帯電話で伝達していく。

 各市町村は従来から災害時、被害や避難、警報などを県などに報告しており、県防災危機管理課の比嘉久雄主任技師は「市町村にとっては、報告と広報を同時に行える。電話やファクス対応に使っていた時間を、他の仕事に回せる」と強調する。さらに「多様な伝達手段があることで、まんべんなくすべての世代に情報が届くだろう」と期待した。

■全体訓練で課題チェック 

 4日の訓練は、全国の訓練に連動して、県主催で初めて開催された。情報発信者側の市町村は県内41市町村中、37自治体が参加。ほかに2村は県が入力を代行した。

 市町村の入力では、避難勧告や避難所開設の情報を出しっぱなしで解除しなかったケースや、情報を反映させるための「登録」ボタンを押し忘れる操作ミスなどがあった。県防災危機管理課の比嘉久雄主任技師が随時、チェックし、ミスのあった市町村には電話で指導した。システム上のエラーはなかった。

 比嘉主任技師は「全体で行った初回の訓練として、勧告や避難の情報が出せたという意味では、おおむね円滑だった」との認識を示す。入力側がつまずいた点をまとめ、5日に各市町村の担当にメールで知らせた。「これからが本格的な台風シーズン。全ての担当者ができないといけないので、スキルアップが必要」と気を引き締める。

 さらに「訓練はメディアなど情報伝達者側へのPR効果もあった。この機会に参画者が増えれば、伝達手段も増える」と述べた。

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 全国で唯一、公立の高校、中学、小学、幼稚園の休校情報を提供する県教育庁の保健体育課は、訓練で「幼児・児童・生徒等の安全を確保するため、終日臨時休校となります」との文面を送信した。同課は「より児童・生徒の安全面の向上につながってほしい」と期待した。

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 県都・那覇市は、沿岸部の浸水被害、山間部の土砂被害を想定し、2地域に避難所開設の情報を発信した。市民防災室は、Lアラートで「近隣市町村の情報も把握できる。災害時も、関係機関がうまく連携できれば」と話した。

■メディアも手順確認

 4日の訓練で、情報伝達者の県内マスメディアでは新聞2社、テレビ局4社、ラジオ局4社(うちコミュニティFM3社)が参加。各社は、Lアラートで入る情報を確認し、実際に運用する際の手順などについて確認した。

 琉球放送(RBC)は、関係するスタッフを集めて、画面で流す文字情報に転換する手順を確認した。嘉陽順報道制作局報道制作部長は「すべての情報が流れるわけでない」とし、緊急性や災害の規模などに応じて判断すると説明した。

 琉球朝日放送(QAB)は随時、報道制作局報道制作部がLアラートで入る情報を確認し、検討した。謝花尚部長は、訓練で入った情報が「市町村により、具体的な所と、そうでない所がある」との感想。

 NHKはLアラートと連動させたシステムを開発し、各県の放送局でデータ放送やホームページ(HP)などに活用する。避難情報、避難所の情報はすべて掲載し、その他は取捨選択する。沖縄放送局で担当した津曲(つまがり)信幸企画編成部副部長は「訓練で発信者、伝達側、双方とも慣れてきた。視聴者への広報が必要」と強調する。

 沖縄タイムスでも、パソコンの画面上で随時、更新される情報を確認した。警報や避難情報などはHP上で速報し、取材にも生かす。担当の与那嶺一枝社会部付部長は「Lアラートをベースにしつつ、これまで通りの独自の取材も重ねることになる」との見通しを話した。

■二つの方法確保を 沖縄国際大学特別研究員・稲垣暁さん

 システムを作ることはいいことだが、一元的にデジタル化することで、完全に依存してしまうことは怖い。災害時は常に二つの方法を確保しておくことが必要。ファクス送信など、バックアップのためにアナログの手段も必要だと思う。

 市町村の担当者が最初の発信者となるが、注意報や警報、勧告、指示などを機械的に流していては間違いが生じやすい。まずは担当者が専門性を高めて、情報を理解した上で発信することが大事だ。

 このようなシステムを作っても、住民側には、こぼれ落ちる人も出てくる。どの伝達手段も持たない地域の高齢者らに、どうやって伝えるかということは、常に考えていきたい。細かな配慮ができ、専門的に考えて行動できる人が行政側に必要だ。

 東日本大震災や阪神大震災の事例をみても、大災害の時は、住民の半数は避難所に行く。逃げ足の遅い人が避難所に入れず、たらい回しにされることもあった。災害発生後に混乱を避けるため、そのような人々を誘導できるよう、避難所の利用状況もこのシステムで提供できれば、二次災害、間接死などの防止にも役立つのではないか。