角川書店は多様な顔を持つ出版社だ。2代目社長時代には薬師丸ひろ子さんら新人女優を起用した映画と書籍でメディアを席巻した。俳句や近現代小説など伝統的文学を支える一方、一大ジャンルに成長したライトノベルという新分野のさきがけでもある

▼「校本おもろさうし」(1965年)「おもろさうし辞典・総索引」(67年)をはじめとする沖縄学関連の基礎文献の版元として沖縄との関わりも深い。沖縄関連本の出版を推し進めたのは創業者の故角川源義

▼61年の来県時に南部戦跡を巡り、若者たちが死に追いやられたことに、深い悲しみを覚え「いても立ってもおれぬ」(「おもろさうしの島-伊波普猷」)思いを抱いた。東京に戻ってすぐ「おもろ」関連書籍の出版企画はスタートした(外間守善「回想80年」)

▼国学院大で折口信夫に師事し、交流のあった伊波の「古琉球」再刊(42年)に携わるなど、沖縄の歴史や文化にも関心が高かった

▼「おもろ」関連書籍は会社側が1度出版不可の判断を下したが、自身で発行部数の半分を買い取ることなどを条件に出版実現にこぎつけている

▼沖縄をたたけば売れると、沖縄への無知や偏見に満ちた本や雑誌が横行する現在の出版界を源義は苦々しい思いで見ているはずだ。あす9日は源義が生まれた日、生誕100年の節目に当たる。(玉城淳)