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  • やんばるの世界自然遺産登録へ国際機関の調査が15日から始まる
  • 地元は人口減の歯止めになると期待。自然ガイドなど新事業を模索
  • 一方で観光客増加による環境破壊や希少生物密猟を不安視する声も

 「さあ世界へ」の掛け声とともに環境省や県などが目指す世界自然遺産登録に向け、国際自然保護連合(IUCN)の県内調査が15日から本島北部を皮切りに始まる。来夏にも登録が認められれば、やんばるの森は「世界の宝」として国内外の注目を集めることになりそうだ。長年、やんばるの自然と生きてきた地元の国頭、東、大宜味3村の住民らはどんな思いでいるのか。現場を歩いた。(北部報道部・山田優介)

ヒカゲヘゴの群生やイタジイなどが広がるやんばるの森=国頭村

■人口減の歯止めに

 人口減少の一途をたどる国頭村。村の人口ビジョンによると、2010年の人口は1980年から2割以上減った。村は人口減少が地域経済の縮小を呼び、さらなる人口減少につながる「負の連鎖」を懸念する。

 「過疎が進む地域の定住促進につなげたい」。国頭村の世界自然遺産対策室の宮城明正室長は、遺産登録が負の連鎖を断ち切る突破口になりうると期待する。「世界自然遺産の名称を使った新たなブランドを確立し、観光客と地元住民が交流する機会を設けたい」と描く。

 やんばるの森を生活基盤としてきた林業関係者も新たなビジネスチャンスを模索する。国頭村森林組合では昨年、建築材やチップなどに使う木材を約400トン伐採した。仲原親一組合長は「木材のニーズはある。今まで通りの仕事は続けたい」としつつ「やんばるは『生活のための山』から『自然遺産の山』に変わる」とも語る。「環境保全に配慮し、時代の変化に対応するしかない。山を知り尽くした自分たちにできるのは観光客の案内。ガイドなどの新事業もいいかも」と考えを巡らせる。

■苦情が来そうで…

 一方、遺産登録で暮らしがどう変わるのか不安の声も聞こえる。東、大宜味の両村の林業関係者が所属する北部森林組合の玉城政光常務理事は、国内外から環境保全の意識が高まることに複雑な表情だ。「確かに保全は大事だが、たとえ法的な許可を得て伐採しても自然保護団体や観光客から苦情が来そうで、やりづらくなる」と声を落とす。

 登録された直後は観光客が一気に増え、適切なルールなしでは逆に環境破壊をもたらしかねない。夜間の林道パトロールなどで希少生物の保護に取り組む大宜味村田嘉里の仲原秀作区長(35)は「村内で密猟者は見掛けないが、知名度が上がれば不安だ。観光客がモラルや節度を持ってもらわないと困る」と注視する。

 今月、県がIUCNの現地調査時に名護市辺野古の新基地建設問題を議論する場を設けるよう求めたとの報道があった。3村の関係者は「いまさら米軍基地問題を出し、登録に遅れが出たら困る。今まで県とは基地問題を避けることで足並みをそろえてきた。今後もそうするべきだ」と語った。