憲法改正を巡る議論が大きな転換点を迎えている。民進党の分裂と希望の党の誕生によって、改憲を巡る政治地図は大幅に塗り替えられた。

 自民党は選挙公約の重点項目に今回初めて、9条への自衛隊明記を含む憲法改正を掲げた。

 希望の党は9条を含めた改正論議を進める、との公約をまとめた。日本維新の会は9条を含む改憲に積極的だ。

 安倍晋三首相は選挙後の希望、維新との連携を期待する。仮に自民党が現有議席を減らしたとしても、野党を含む改憲勢力で3分の2を超える議席を確保すれば、改憲の展望が開ける、との読みだ。

 だが、事はそれほど単純ではない。連立政権を支える公明党は「国民は自衛隊を憲法違反とは考えていない」として9条改憲に慎重な姿勢を崩していない。

 民進党は合流前、安保法制に反対し、安保法制を前提とした安倍政権の下での改憲には反対する、との方針を掲げていた。方針転換に対する有権者の風当たりは強い。

 自民党も決して一枚岩ではない。安倍氏は憲法記念日の5月3日、党内論議も経ず、国会の憲法審査会の頭越しに、9条1、2項を維持した上で自衛隊の存在を明記する改憲案を打ち出した。石破茂・元防衛相らから強い異論が出ている。

 安倍政権の下での、安倍政治の総決算としての、安倍氏主導の改憲-その是非が問われている。

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 7、8両日の党首討論で、憲法改正を巡る各党の立場の違いが鮮明になった。

 希望の小池百合子代表は、自衛隊の存在を書き加えることで「防衛省と自衛隊の関係はどうなるのか」と疑問を提起した。

 立憲民主党の枝野幸男代表は「違憲の安全保障関連法を追認することになる」と自衛隊明記に反対。共産党の志位和夫委員長は「海外での武力行使が無制限に可能になってしまう」と懸念を示した。法曹界の圧倒的多数から違憲の疑いを指摘された安保関連法が、改憲との関係で選挙の争点に浮上しそうだ。

 戦力の不保持と交戦権の否認をうたった1項、2項を維持したまま自衛隊の存在を明記した場合、自衛隊はいかなる存在になるのか。

 「自衛のための必要最小限度の実力で、憲法が禁じる戦力には当たらない」というのが現行の憲法解釈である。

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 自衛隊を憲法に書き加えるのであれば、戦力でないことをはっきりさせるため、自衛隊ができることをいちいち憲法に列記しなければならないはずだ。安倍氏はシビリアン・コントロール(文民統制)の原則を盛り込むと言うが、恣意(しい)的な解釈の余地を残すのは極めて危険である。

 それよりも何よりも沖縄では、改憲より先に憲法の完全な適用こそ優先されるべきである。沖縄代表不在の国会で成立した現行憲法は、施政権が返還されるまで沖縄に適用されず、今も「半憲法状態」が続いているのだから。