沖縄県金武町金武でケーキ店を営む安富祖光将さん(28)が、5月に福岡市内で開かれた「2015全九州洋菓子実技コンテスト」のあめ細工部門で最優秀賞を受賞した。実技4時間の中で集中力が切れそうになったときに思い出したのが、大会の約2週間前に亡くなった常連客で、パティシエを夢見た高里萌さん(享年18)だった。安富祖さんは「萌さんを思い出して頑張れた」と話し、萌さんの両親は「きっと娘も受賞を喜んでいると思う。最高の供養になった」とほほ笑んだ。(伊集竜太郎)

あめ細工で最優秀賞を受賞した安富祖光将さん(右)と高里佳子さん=5日、金武町金武「オキナワ フュージョン パティスリー モンクレア」

安富祖さんが入院中の高里萌さんに贈ったあめ細工(高里佳子さん提供)

あめ細工で最優秀賞を受賞した安富祖光将さん(右)と高里佳子さん=5日、金武町金武「オキナワ フュージョン パティスリー モンクレア」 安富祖さんが入院中の高里萌さんに贈ったあめ細工(高里佳子さん提供)

 安富祖さんは都内で製菓専門学校卒業後、修業を積み2012年11月、町金武に「オキナワ フュージョン パティスリー モンクレア」をオープンした。そこに常連客で訪れていたのが高里さん親子だった。

 萌さんは食べ物で人を喜ばせる仕事がしたいとパティシエを夢見て、食品関係の学科がある高校に進学。製菓の専門学校に進学するため勉強し、成績も上がっていった。

 その時、出会ったのが安富祖さんだった。母佳子さん(50)は「初めて食べたとき、萌は『本物だ』と話していた」と振り返る。萌さんは、小遣いをためては月に何度も店に足を運んだ。目指す専門学校を卒業した安富祖さんに憧れた。安富祖さんは「パティシエを目指していると聞いて、お客さまというより仲間という意識で接していた」。

 しかし、萌さんは高2の途中、頭痛を訴えるように。秋に病院へ行くと、脳に約6センチの腫瘍が見つかった。がんだった。医師は「もって2年だ」と両親に宣告した。

 萌さんは腫瘍の影響で、食べ物の匂いを嗅ぐと吐いていた。その時、安富祖さんの店に飾られたあめ細工を見て、父尚史さん(43)が娘へ贈るあめ細工作りを依頼。事情を知り、快諾した安富祖さんは、ケーキ形のあめ細工を贈った。白いケーキの上にはイチゴと、萌さんへのメッセージとして「パティシエの基本技術」(安富祖さん)であるバラを添えた。

 パティシエを夢見た萌さんだったが、コンテスト約2週間前の5月4日、息を引き取った。

 両親は「まだ娘の四十九日も来ていない」と取材をためらったが、安富祖さんを応援しようとの思いで引き受けた。安富祖さんは「萌さんは夢がかなえられず、本当に悔しかったと思う。勝手ながら萌さんの分まで頑張りたい」と誓った。