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  • 全国の憲法学者226人が連名で安保法制廃案を求める声明を出した
  • 沖縄大学学長の仲地博氏は「法律を憲法の上に置く“下克上”だ」
  • 琉球大学教授の高良鉄美氏は「どう考えても専守防衛を逸脱」

 安倍政権が今国会の成立を目指す安全保障関連法案に対し、全国の憲法学者らが連名で声明を出し、速やかな廃案を求めている。その数は12日時点で226人。声明は、法案によって憲法9条の理念が根底から覆り、「戦争法案と呼ばれていることに十分な根拠がある」と警鐘を鳴らす。なぜ憲法のプロたちが結束し、安保法案に反対しているのか。沖縄から名を連ねる5人に思いを聞いた。(西江昭吾、松崎敏朗)

沖縄大学学長の仲地博氏

■憲法への「下克上」 仲地博氏 沖縄大学長

 憲法研究者として看過できない。今、声を上げないといけないという思いで呼び掛け人に加わった。従来右派とされてきた学者も安倍政権に反対している。

 政治は、憲法の下で行われるもの。「憲法を法案に適応させる」という中谷元・防衛相の発言に政権の考えが表れており、法律を憲法の上に置く「下克上」だ。

 後方支援に武器提供まで含まれ、戦闘行為そのものだ。従来の政府解釈を超える。堂々と憲法改正を訴えるべきだ。「従来の考えを変えていない」という政府側の説明は、立憲主義をないがしろにしている。

■専守防衛から逸脱 高良鉄美氏 琉球大教授

 これだけ短期間に憲法学者の賛同が集まったのは、危機感の表れだ。「政府が合憲として法案を出した」という菅義偉官房長官の国会答弁はおごりだ。憲法を知らないから言える。

 自衛隊の武力行使の要件に、「わが国と密接な関係にある他国」が攻撃を受けた時も含まれた。憲法9条は最大限譲歩して個別的自衛権を認めたが、わが国が攻撃を受けずに武力行使に参加するのは、どう考えても専守防衛を逸脱する。

 「合憲性」をつくり出すため、下位の法律で憲法を変えようとしている。考え方自体がおかしい。

■何から何まで違憲 井端正幸氏 沖縄国際大教授

 手続きから内容を含め、何から何までおかしい。違憲の法制だ。憲法9条に違反するだけではない。平和主義にとどまらず、立憲主義なども根底から覆す。憲法の基本原則への挑戦に当たる。今まで、個別的自衛権のギリギリのところで歯止めをきかせてきた。

 国会論戦の中で「米国の戦争に巻き込まれない」と政府側は説明するが、おかしい。集団的自衛権の行使は、戦争への参加が義務付けられる。無理を重ねて、つじつまを合わせようとしているが、ほころびが出るはずだ。教え子の間でも関心は高まっている。

■戦後の歩みを否定 高良沙哉氏 沖縄大准教授

 国民の命に関わる議論。正当な手続きで信を問うと反対されると思い、一時しのぎの手段に出ている。

 学問の積み重ねや戦後日本の歴史を否定していることに憤りを感じる。現実に合わせて憲法解釈を変更するというのは、立憲主義を無視している。憲法の下で政治は進められるべきだ。

 国会議員は同じ政党にいたとしても、間違っていると感じたら議論しないといけない。憲法9条の下、日本は歩みを進め、国際的な信頼を得てきたが、それを壊そうとしている。憲法の枠内で可能な安全保障を考えないといけない。

■徴兵制にも可能性 小林武氏 沖縄大客員教授

 政治的立場などを超え、200人以上の研究者が賛同したことを政府は重く受け止めないといけない。

 半世紀以上、自民党自身が「違憲」と判断してきたことを、安倍政権が解釈で覆そうとしている。根拠の一つの砂川判決は、集団的自衛権の行使について判断したものではない。

 解釈で憲法を変える例が、今後も出てきて徴兵制も可能になるかもしれない。安保法制のように戦争の土台がつくられると、国のありようが大きく変わる。日本では民主主義が守られているが、軍事的価値が優先されてしまう。