安全保障関連法案を審議する衆院の平和安全法制特別委員会が、週明けの15日から正常化された。

 与党は24日までの国会会期を大幅に延長し、法案の成立を図る考えである。14日には、安倍晋三首相が維新の党の橋下徹最高顧問と会談するなど、野党分断を狙って維新の党への働き掛けを強めている。

 だが、安保法案はあまりにも問題が多すぎる。

 内閣法制局の長官経験者を含む圧倒的多数の憲法学者が、審議中の法案を違憲だと断じているのである。廃案呼び掛けに賛同する憲法学者の数は200人を超えた。

 元自民党幹部の山崎拓、亀井静香、藤井裕久、武村正義の各氏も会見で「歴代政権が踏襲してきた憲法解釈を一内閣の恣意(しい)によって変更することは認めがたい」と法案を批判した。

 圧倒的多数の専門家や自民党OBから重大な指摘を受けたということは、法案に欠陥があることを示すものだ。

 政府側答弁は二転三転し、ただでさえ理解困難な法案をますます分かりにくくしている。共同通信社が5月に実施した全国電話世論調査では、安倍政権の説明不足を指摘する回答が81%に上った。

 安倍首相は、戦後日本の安全保障政策の根本的な転換をもたらす法案の今国会成立を、事もあろうに、訪米時に、米国に約束した。国会無視、主権者無視の従属的姿勢は、それだけでも廃案理由に当たるほどの失態だ。

    ■    ■

 政府は、新3要件を満たせば集団的自衛権の行使が限定的に認められる、と主張する。

 わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、それによって「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」とは、具体的にどのような事態を指すのか。

 岸田文雄外相は昨年7月の衆院予算委員会(閉会中審査)で、日米同盟はわが国の平和と安全を維持する上で死活的に重要なので、「米国への攻撃は3要件に当てはまる可能性が高い」と答弁した。

 日米一体化を推進する外務省の本音が出た発言だが、極めて危うい発想だ。この抽象的な要件が具体的に何を指すのか、どのような状況で武力行使ができて、どのような場合にはできないのか、特別委員会の質疑でも、明確に示すことはできなかった。

 厳しい歯止めのつもりで打ち出したにもかかわらず、実際の運用においては骨抜きにされる可能性が高い。

    ■    ■

 政府・自民党は、集団的自衛権の行使容認を合憲とする根拠として、1959年に最高裁が出した「砂川事件判決」を挙げるが、この点についても、多くの憲法学者は「根拠にならない」と否定的だ。

 法律に合わせて憲法を解釈し直すというのは、立憲主義を無視したあべこべの考えだが、国会答弁で中谷元・防衛相はそれをぽろっと口にしてしまった。あとで答弁を修正したが、事ほどさように危なっかしい法案なのである。