米軍普天間飛行場所属のCH53ヘリが飛行中に出火し、沖縄県東村高江の民間地で黒煙を上げ炎上した。民家からわずか300メートル、一歩間違えば大惨事となった事故に、県庁内には激震が走った。一方、選挙への影響を最小限に抑えたい政府は「丁寧な対応」を前面に、火消しに追われた。(政経部・大野亨恭、東京報道部・上地一姫)

米軍ヘリが墜落したとみられる現場=11日午後6時前、東村高江(提供)

 ■うそだろ、最悪だ

 「近くのヘリパッドにもたどり着けないのか。これは大事故だ」。事故後、沖縄県庁に戻った県幹部は、顔を紅潮させ、まくし立てた。

 県に一報が入ったのは午後5時半すぎ。県消防指令センターからだった。「米軍機が墜落炎上」と書かれた紙を手に、基地対策課内で職員が呆然と立ち尽くしていた。ツイッターの動画で、施設外でヘリが黒煙を上げる様子を見て言葉を絞り出した。「うそだろ、あり得ない、最悪だ」

 午後6時ごろには、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官から富川盛武副知事に事故の連絡が入った。「墜落か緊急着陸か」と問う富川氏に、ニコルソン氏は「クラッシュ(墜落)ではない」。けが人はなく、現場は「安全だ」と強調したという。

 ■相次ぐ米軍機事故

 米軍機の事故、トラブルは昨年12月の名護市沖へのオスプレイ墜落後、立て続けだ。8月には豪州、9月にも新石垣空港に緊急着陸した。そして、今度はCH53ヘリ。幹部の一人は「どの機体も危険じゃないか。米軍機は空飛ぶ凶器だ」と吐き捨てた。

 県の怒りと危機感は強く、12日に知事自ら現場を視察することが決まった。事故発生後の夜、即決したという。さらに、富川副知事が上京して日米両政府へ抗議する検討にも入った。

 2015年2月の「N4」地区ヘリパッドの運用開始後、高江での訓練は激増している。幹部は政府が北部訓練場一部返還などを持ち出して負担軽減をアピールしていることに「住民は恐怖におののいている。負担は増えている」と怒りをあらわにした。

 ■安倍首相「遺憾」

 衆院選の真っただ中の事故に、政府は火消しに躍起となった。11日夜、外務省の森健良北米局長はヤング在日米大使館首席公使に抗議し、安倍晋三首相は民放番組で「遺憾」と述べた。県幹部は「選挙になるとこうも対応が変わるのか」と皮肉を込める。

 事故は、選挙結果にも影響を及ぼす可能性がある。「オール沖縄」勢力を構成する政党幹部は「辺野古新基地を使うのは、今回事故を起こした海兵隊。辺野古の賛否が問われる中、有権者は私たちの主張が正しかったと判断してくれるだろう」と支持拡大を見通す。

 一方、自民県連は事故を受け、12日午前に緊急の役員会を招集した。党本部関係者は機体が炎上するテレビ映像を見ながら「選挙への影響は避けられない。米軍の緩慢さは目に余る」と不快感を示した。