沖縄芝居の乙姫劇団などで活躍し、2009年に亡くなった兼城道子さんは立ち居振る舞いの美しい役者だった。歌劇で名声を得て、「語る言葉が歌となり、歩く姿が踊りとなる」という言葉がぴったりきた

▼常に控えめで取材にも言葉数が少なく、記者泣かせの一面があった。だが、インタビューで恋愛の話に及ぶと、「恋の喜び、別れのつらさを経験したからこそ、芝居で表現できる。恋もできないで芝居はできない」と話したのが印象に残る

▼兼城さんが役者の殻を破ったと振り返ったのは、沖縄芝居実験劇場など現代劇への出演。多くの舞台で高く評価された

▼戦後50年の1995年に初めて上演された「いのちの簪(じーふぁー)」もその一つ。作家大城立裕さんの原作を舞台化し、終戦直後をたくましく生きるウチナーンチュを描いている。その中で兼城さんは元看守の妻で盲目の役を好演した

▼戦後70年で「いのちの簪」が20、21の両日、国立劇場おきなわで再演される。兼城さんや伊良波晃さんらベテランを配した前回と変わり、若手中心になる

▼演出家の幸喜良秀さんは「沖縄芝居の命のリレー」と位置付ける。生身の人間がつくり出す舞台で沖縄戦による悲劇や人々の営みが再現され、観客は疑似体験する。新たな息吹が吹き込まれた20年ぶりの再演に期待したい。(与那原良彦)