午前5時から起きているのですでに9時間が過ぎようとしている。

 いくらテンションが上がったとはいえ、眠さもとっくにピークを越えてフラフラだ。

 それなのに、那覇に戻ったその足で松川に向かった。住宅街を歩き目指すは「すば&ラーメン 麺屋あん」。沖縄生麺協同組合で沖縄そばの歴史に触れ、亀浜製麺所で麺のできる工程とおいしい食べ方をこの目と耳で確かめ、今度は自家製麺の世界も気にかかる。

 そこで自家製麺のそば屋を調べてみると、数ある店舗の中から「沖縄そば、ラーメン」両方を自家製麺で勝負しているこの店のことを知った。「どちらがおいしいのだろう、両方食べてみたい」自分でその答えをつかもうと、麺屋あんにやってきた。地図はこちら

 

 ここであれっ?と思ったあなた、正解です。デジャブではなく私はやりますよ、伝家の宝刀「はしごそば」ならぬ「その場で2杯目おかわり」を。

 

 というわけで、この2杯に集中するために朝5時から何も食べず空腹に耐えてきた次第。
閑静な住宅街の中、道路沿いにその店はたたずんでいた。暖簾(のれん)をくぐって中に入る。ランチタイムを過ぎたこともあって店内には私ひとりだけだ。

 この時点で勝利のガッツポーズを掲げたいのをぐっとこらえる。

 なにせ1杯食べてすぐに次の1杯をその場でオーダーするわけだから、ほかにお客さんがいると、躊躇(ちゅうちょ)してしまい頼めない恐れもあるのだ。

 こんな私でも恥じらいはまだ失くしていないようだ。

 食券制ということと、メニューはネットで下見を済ませていたので大体の内容は把握できていたものの、それでも券売機の前でしばし悩む。

 1杯目をラーメンにすべきかそばにすべきか-。眠すぎて思考回路が止まりつつあり、判断能力が著しく劣っている。

 一番おなかが空いた状態でおいしく味わいたいと思い、やっぱりここは沖縄そばからにしよう、とようやくボタンを押す。

券売機です

 三枚肉そば小(420円)と、もちろんジューシー(並盛150円)も一緒に頼む。

 「そばは小にしたし、ネットで見たところジューシーを勧めている人が多かったし…」誰に聞かれたでもないのに、何かと心の中で言い訳しながらもちゃっかり両方頼んでしまうところは、はしごそばで慣れた大食いの名残が否めない。

 こちらのお店ではスープも2種類あり、「あっさり」と「とろこく」から選べる。その情報ももちろん事前にチェック済みだ。

メニューです

 三枚肉そばを「とろこくスープ」にして、後に頼むであろうラーメンを「あっさり」にしようとひとり頷(うなず)く。

 私がそんな決意を心に秘めているとは露知らず、店主さんは私の三枚肉そばとジューシーを作りはじめた。

 店内は、カウンター席とテーブル席合わせて20席ほどだろうか。明るいL字型のカウンターのなぜかど真ん中に陣取る。

 人のいない、静かなこの空間を独り占めしたかったこともあり、また真ん中で2杯を堂々と完食したいという小さな野望もあり、妙な位置だなあと思いつつメニューを眺めたり、自家製という紅ショウガの淡い紅色を見つめたりしていると、思っていたよりも早く三枚肉そば小とジューシー並盛はやってきた。

三枚肉そば小とジューシー並盛

 「とろこく」というだけあって、こっくりとした見た目のスープはメニューに書かれた説明によると「豚骨、鶏骨の出汁をメインに鰹昆布の出汁を合わせ、豚脂は減らし、鶏脂は残しています」とある。

 コクはあるのに油っこくなく後味もすっきりとしている不思議なスープをごくごくと飲む。自家製麺は少し硬めだが、どちらかというと硬めが好みなのでこれまたうれしい。亀浜製麺所の亀濱さんが教えてくれたように、少しだけうねりのある麺にスープが絡んでいるのもいい。

 普段、外付けの紅ショウガは使わない派だが、こちらは自家製というのも気になり入れて味を変えてみる。むむむ、やはり自家製はひと手間かけているだけあってショウガまでおいしい。

紅ショウガ

 沖縄そば29杯のスタンプラリーをやっていたころより、少しだけそばの表情まで観察できるようになった。この夏の成長のひとつだろう。私の中にはまだ伸びしろが確かに存在している。

 そんなことを思いながらもひとり黙々と食べ進めているからだろうか、それとも小サイズで並盛だからか。三枚肉そばもジューシーもおわんの中から姿を消すスピードがやたら早い。気づけば5口ぐらいで食べたんじゃないかと思う。

 私は一体どれだけ早食いなのだろうか…。

 

 それぞれのおわんを覗(のぞ)いて空っぽになったのを確認し、セルフサービスの水をおかわりしてひと口飲む。

 息を少しはき、財布を握って立ち上がった。

 そう、このままおかわりしちゃうんだ♡。