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  • 「戦争体験が風化すれば平和は遠ざかる」。語り部の危機感は強い
  • 安保関連法案や辺野古新基地など、不安や懸念は深まっている
  • 戦後70年、今なお戦争と基地を引きずり続ける地域が他にあるのか

 県立第三高等女学校の「なごらん学徒隊」として沖縄戦に動員され、負傷兵の看護にあたった上原米子さん(88)は、戦場での体験を紙芝居に仕立て、子どもたちに伝えている。

沖縄戦の戦没者名が刻まれた「平和の礎(いしじ)」=糸満市摩文仁の平和祈念公園

 麻酔なしで手足を切断した野戦病院での場面や、攻撃を受けて腹部から血が噴き出しもだえ苦しむ人々の最期などを絵と生の言葉で語る。

 体験に基づく描写の中に1枚だけ「どうしても」と級友に頼まれて描いたものがある。血を流し倒れる夫婦の横で、爆風に飛ばされた男の子が木の枝にぶら下がっている絵だ。

 男の子の着ている服が枝に引っ掛かっているのではない。木の枝が直接、体を刺し貫いている。

 「お願いです。殺してください」

 どうすることもできないまま、その場を離れた級友は罪悪感に悩まされ、必死に懇願する男の子の声が生涯、耳から離れなかった。昨夏、亡くなる前に「代わりに話して」と上原さんにお願いしたのだという。

 沖縄戦の体験者が一人二人と減っていくごとに、それぞれの掛け替えのない経験も歴史のかなたに消える。せめて絵を通して男の子の無念を後世に伝えてほしいという級友の思いが、上原さんにバトンタッチされたのである。

 戦後70年。県人口に占める70歳以上の割合は15%を切った。戦争体験を明瞭に語ることができる80歳以上となると5%ほどだ。

 「戦争体験が風化していけば、平和は遠ざかっていく」。沖縄の語り部は危機感を募らせる。

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 沖縄戦体験者を対象に朝日新聞社が実施したアンケートで、65%もの人が「沖縄が再び戦場になる可能性がある」と答えている。本紙などの県民意識調査では、安倍内閣への支持は22%で、全国に比べ際立って低かった。

 この二つの数字が示すものは時代への強い危機感である。

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が国会で審議され、名護市辺野古では米軍の新基地建設が進んでいる。沖縄が再び「捨て石」にされるのではとの不安や懸念は深まるばかりだ。

 北谷町に住む安和美智子さん(90)は、昨夏、辺野古で開かれた新基地建設に反対する集会にタクシーを飛ばし駆け付けた。前日まで参加を迷っていたが、当日の朝になって居ても立ってもいられず、顔見知りの運転手に3万円を渡しチャーターした。

 「なぜこんな小さな島にたくさんの基地を置くのか。基地は沖縄を守らない」

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 きょう沖縄は「慰霊の日」を迎えた。この機会に安倍晋三首相とキャロライン・ケネディ駐日米大使は、沖縄の歴史と現実を直視してほしい。

 戦争が終わって70年がたつというのに、今なお戦争と基地を引きずり続けている地域が他にあるだろうか。沖縄では戦争は終わっていないのだ。

 沖縄の犠牲や負担を前提にした安全保障政策を私たちは受け入れない。沖縄は平和の発信地にこそふさわしい。