「いいぞ」「そうだ」の声が飛び交って指笛が鳴り響き、万雷の拍手はやまなかった。かと思えば「帰れ」「何しに来た」のやじが飛ぶ

 ▼静かで厳粛な場だった沖縄全戦没者追悼式は昨日、県民の抑えきれない感情を発露する場へと様変わりした。平和宣言をする翁長雄志知事や、自作の詩に織り込んだ古(いにしえ)の琉歌をたかだかと歌い上げる知念捷(まさる)君(与勝高3年)に向けられたエールと、安倍晋三首相へのブーイング

 ▼辺野古の新基地建設問題と安全保障関連法案がヤマ場を迎えている政治状況を背景に、ウチナーンチュ2人が発した言葉は力強さを増した。戦後70年。沖縄戦体験者の語りもまた、変容してきた

 ▼眼で捉えた凄惨(せいさん)な戦場の様子に、内なる重しを語る。「けがをして殺してと訴えた中学生くらいの子を置いて逃げた」「けがした同級生に連れて行ってと頼まれたが、置いていった」「孤児院に居て、物乞いをした」

 ▼防衛隊の男性は「山」と言っても「川」の返事がない人に夜道で出会ったとき、後ろに居た兵隊が代わって銃剣で刺し殺した。合言葉が分からない住民だったかも-と

 ▼何十年も経ないと語れない体験がある。戦を知らない大多数の私たちは、常に体験者の前で頭を垂れ、耳を傾けたい。今の政治を誤った方向に向かわせない原点が、その語りの中にある。(与那嶺一枝)