国会の会期が、9月27日まで95日間延長された。通常国会としては、戦後最長の延長幅だ。

 集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ安全保障関連法案を是が非でも、今国会で成立させたいという安倍晋三首相の意向である。

 憲法9条は、集団的自衛権の行使を認めていない。それにもかかわらず、安倍政権は、閣議決定で憲法解釈を変更し、新3要件の下で集団的自衛権を行使できるとする法案を国会に提出した。

 そもそも多くの憲法学者から「憲法違反」が指摘されている法案である。今月4日の衆院憲法審査会で憲法学者3氏が違憲と断じたのに続き、22日の衆院特別委員会の参考人質疑でも、元内閣法制局長官2人がそろって安保関連法案を批判した。

 第1次安倍政権などで内閣法制局長官を務めた宮崎礼壹氏は、政府による憲法解釈の変更を「法的安定性を自ら破壊するものだ」と断言。集団的自衛権が行使できないとした1972年の政府見解の結論部分を変え、行使容認の根拠としたことに対して「黒を白と言いくるめる類い」と、厳しく非難した。

 阪田雅裕元長官も、首相が集団的自衛権の行使例とする中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は日本の存立を脅かす事態になりようがなく「従来の政府見解を明らかに逸脱している」と断じた。

 政府の憲法解釈を担ってきた内閣法制局の長官経験者らが、法案の核心部分に疑問を突きつけた意味は重い。

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 安保関連法案に関して安倍首相は当初「6月下旬の衆院通過、8月上旬の成立」を描いていたが、憲法学者の「違憲」指摘で審議が滞った。維新の党との修正協議もめどが立たないことから、成立を確実にするため「最大限の延長幅」をとったという。

 安倍政権が視野に入れるのは衆院での再議決だ。法案の衆院通過から60日たっても参院で議決されない場合、否決されたとみなして衆院で再可決して成立させる「60日ルール」である。会期延長によって、衆院で7月下旬までに安保関連法案を通過させれば、再議決で成立の見通しが立つのである。

 これまでの国会審議で安保関連法案の議論が深まったとはとても言えない。安倍首相らが野党の質問に真正面から答えず意図的に論点をずらす場面も目立った。こんな議論を続けても、到底採決の環境は整わないだろう。

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 共同通信が20、21両日に実施した全国電話世論調査によると、安保関連法案が「憲法に違反していると思う」との回答は56・7%に上った、法案に「反対」は58・7%で、5月の前回調査より11ポイント上昇した。

 安倍首相は、4月の訪米の際に米連邦議会で演説し、安保関連法案を「この夏までに成就させます」と米国に約束した。対米公約を優先して、国民を置き去りにするようなら本末転倒である。国民世論と向き合うなら廃案にするしかない。