最近、差別と偏見に関連する二つのニュースが目に止まった。一つは先月21日本紙。エイズ患者で認知症の男性が、介護施設の入所を断られたため、治療は済んだにも関わらず1年以上入院を余儀なくされている

▼二つ目は今月24日。性的少数者支援策の制定を目指す宝塚市の市議会で、自民党の大河内茂太議員が「宝塚がHIV感染の中心になったらどうするのか」と発言した

▼両事象に共通するのはエイズに対する無知。感染経路は主に医療行為などによる直接の血液交換や性交渉に限られ、通常の介護で感染の心配はない。そして、エイズ患者は性的少数者に限らない

▼差別は「個人や集団に対して正当な理由なく不利益を強制する行為」だが、その裏で無知が関係していることは多い。哲学者ソクラテスは「無知の知」で、自分が無知であると知る重要性を語っている

▼無知に罪はないが、無知を元にした言動は時に大きな害をなす。だからこそ物事を知る努力が必要だ。以前取材した医師は「エイズへの偏見を恐れて検査が遅れたり、感染が分かっても経路を特定しにくい」と心配していた

▼全国のHIV感染判明数は昨年、過去3番目に多かった。日本を含む東アジアは世界でも新規感染が多い地域の一つという。私たちの無知が、それを招いているとしたらどうだろう。(黒島美奈子)