写真には「好きな作家はヘミングウェー」の解説。一面に広がる草むらの中でごろりと横になり、しばし読書にふける穏やかな姿を捉えた一枚は、1966年、ベトナム戦争に出兵した米兵の一コマだ

▼地獄のような日々の、束(つか)の間の静寂をいとおしむように、大切にしてきた1冊に目を走らせる。28日までタイムスギャラリーで開かれた那覇市出身の写真家・石川文洋さんの作品展は、胸に迫るものがあった

▼米海兵隊に同行し、壮絶な戦場を撮り続けた文洋さんは「みな良い人間。戦争が彼らを悪者にした」と嘆く。手足を失った子や無残な犠牲者の写真の横には「いつも戦争を起こす政治家は安全な場所にいる」の言葉

▼会場を訪れた元基地従業員の60代の男性は「15歳で働き出した。何も分からず、言われるまま弾薬など運んだ」と戦争に加担していた自分を悔いた。「僕の運んだ弾が人を殺し家族をバラバラにするなんて。ベトナムに行き手を合わせたい」

▼憲法9条に守られた国民には、戦争は昔の話との思いがあろう。だが政府は国会の会期を戦後最長に延ばし、安保関連法案を通そうと必死だ。同案に異を唱える報道機関を「懲らしめる」と発言した自民党議員もいた

▼決して人ごととは言い切れぬ不穏な足音がする。時の政権がおごり、暴走したツケは国民に降る。(儀間多美子)