那覇市の映画館・桜坂劇場(中江裕司代表)が7月1日で開館10周年を迎える。単館系映画館としての機能に加え、カフェや雑貨、市民講座と幅広い活動が魅力だ。立ち上げから携わる野田隆司プロデューサーは「人が集まり、にぎわいを生む場所を理想にやってきた。これからも街と共存していきたい」と話す。(聞き手・村井規儀)

多くの映画ファンが訪れる桜坂劇場=那覇市牧志

「街と共存していきたい」と話す野田隆司プロデューサー=那覇市・桜坂劇場

多くの映画ファンが訪れる桜坂劇場=那覇市牧志 「街と共存していきたい」と話す野田隆司プロデューサー=那覇市・桜坂劇場

 -開館のきっかけは。

 「2004年秋に、中江から桜坂シネコン琉映を引き継ぐ話を聞いた。常設映画館の運営は全く想像がつかなかったが、『アーニーパイル国際劇場や沖映本館が街並みをつくってきた。街中から映画の灯(あか)りを消してはいけない』との中江の思いが強く、勢いでやった」

 「その時点で映画だけでは維持できない認識があり、音楽やアート、ショップなど複合的な取り組みを模索した。この方針は成功で、現在の映画収入は売り上げ全体の50%にも満たない」

 -映画館のデジタル化はどう対応したか。

 「配給会社の様子を見ながらの対応だったが、12年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で切り替えた。デジタルしかなかったが、前編も上映したので絶対に取りたかった。ホールAとBはデジタル対応だが、Cはフィルムとブルーレイで上映している」

 「スクリーンは三つだが、1日10本以上を上映することもある。期間は2週間がめどで、上映する時間帯をずらして多くの人に見てもらう工夫をしている。どの映画にどれだけ人が入るか、丸々1カ月上映するのはリスクが高いからだ」

 -映画以外の魅力もある。

 「音楽イベントは劇場の両輪にまで成長した。音楽専用ホールではないため、当初はライブ感が危惧されたが現在はクリアできている。やるべき、やる必要のあるアーティストを選んでいる。現在はワールドミュージックに力を注いでいて、単純に見せるだけでなく、沖縄とのコラボレーションや文化交流など、何かが生まれる場を提供したい」

 「民謡歌手・大島保克さんのレコ発ライブが1回目だった。6月の報道リリース前に大島さんの観客募集を行い、沖縄タイムスに劇場開館がばれた経緯もあったね」

 -地方映画館の成功例ともいわれる。

 「スタート時は3千人だった会員数は1万人を超えた。これは全国的にもない規模で、劇場のコア部分だと思う。10周年の節目にシステムを更新してポイント対象を映画だけに限らず、飲食や雑貨購入まで広げた。映画館に足を運んでほしい、のぞいてほしいから。08年から始めた桜坂市民大学も発想の原点は同じ。人が集まり、にぎわいが生まれることで中江の思いにつながっていく」

 「県外の映画館関係者が見学に来ることも多い。どうしたら継続できるかが共通の課題だ」

 -今後の展望と課題は。

 「観客のニーズに対して新しいサービスを提案していくので、完璧な映画館には永遠にたどり着けないと感じている。マイナーチェンジを繰り返していく。ドリンクやスナックなど劇場内に持ち込める軽食だけ扱っていた『cha-gwa』から、ご飯物をしっかり提供する『さんご座キッチン』への移行がいい例」

 「いつの時代でも映画が娯楽の一つであることは変わらないが、若者への広がりは難しい。また、サクラザカ・アサイラムや桜坂マルシェに限らず、もっとコミュニティーと密な関係を持ちたい」

■4・5日映画無料

 桜坂劇場は10周年を記念して、4、5日にファンクラブ会員を対象とした映画の無料上映を行う。同館が上演した歴代ヒット作品を中心に、4日は「チョコレートドーナツ」(2014年)や「かもめ食堂」(06年)など5作品。5日は中江裕司監督作品の「恋しくて」(07年)など4作品。問い合わせは同劇場、電話098(860)9555。