どこでも自由に手話が使える社会の実現に向けて「手話言語法」の制定を国に求める動きが広がっている。

 聴覚障がい者のコミュニケーションの手段である手話を音声言語の日本語と同じように言語として定める法律である。手話を学ぶ機会や手話で教育を受ける機会、手話通訳を利用する機会の保障などを目指すものだ。 

 全日本ろうあ連盟の調査によると、県内では昨年9月の今帰仁村議会を皮切りに、ことし6月末までに36市町村議会で手話言語法の制定を求める意見書を採択している。残りは5自治体。県議会も昨年7月、全会一致で可決した。

 2011年の改正障害者基本法で「言語に手話を含む」と明記されたことから機運が高まり、全国では40都府県ですべての自治体が意見書を採択。県内では昨年4月の「障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例(共生社会条例)」施行以降、動きが加速した。

 日本のろう教育は、長い間、相手の口の動きを読み取り、発声訓練を行う「口話法」が中心だった。健聴者のように話すことを優先したためだが、習得の難しさが当事者の負担となってきたという。他方、手話を使うことが差別の対象になることも。公の場で手話を使える人が少ないという現実的な問題もある。

 連盟が中心となり作成した法案の目的には「手話を使用して生活を営み、手話による豊かな文化を享受できる社会」とある。手話が生活の中の当たり前の言語として受け入れられれば、聴覚障がい者の社会参加は大きく進む。

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 障がい者の社会参加の中でも政策決定の場への参加は重要である。法案には「ろう者は政治に参加するため、手話を選択し使用する機会が保障される」とし、その権利も盛り込んでいる。

 この春、東京都北区議に当選した斉藤里恵さんは、耳が不自由でスムーズに話せない。初めて登壇した一般質問では、パソコンに入力した文章を音声変換しスピーカーで議場に流す方法で、障がい児の教育について尋ねた。

 斉藤さんの当選が、障がい者向けのシステムの導入という議会のバリアフリー化を後押ししたのだが、「声」による運動が中心の選挙戦では「聴覚障がい者が排除されている」と感じたという。

 インターネットで発信している議会中継に手話通訳を導入する動きも、今のところ一部自治体にとどまっている。 政策決定の場である議会をどう開いていくかは、大きな課題だ。

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 国への働きかけと並行して、鳥取県や北海道石狩市など県や市町村レベルで手話言語条例の制定が進んでいる。

 条例ができた自治体では、学習会の開催など手話を学ぶ機会が増え、手話を使う環境が整備されつつある。一方、手話通訳者の絶対数が足りないなど課題も浮かび上がる。

 沖縄県の共生社会条例は当事者の主体的な取り組みでつくられた画期的な条例だった。市町村議会で進む意見書の採択を、県条例づくりへの弾みとすべきである。