特定健診、長寿健診が始まってから、「腎機能が低下しているので腎臓内科を受診するように言われた」と当院を受診する方が増えています。健診では「血清クレアチニン値」から「eGFR(推算糸球体濾過(ろか)量)値」を計算し腎機能としています。eGFR値60未満だと「腎機能低下の疑いあり」と判定されます。

 ところが、このクレアチニンを用いる方法には問題があります。血清クレアチニン値とeGFR値は反比例の関係にあり、血清クレアチニン値が高いとeGFR値は低くなり、腎機能が低下しているとみなされます。クレアチニンは筋肉で作られるため、筋肉量の多い男性やよく運動している方は多く作られ、その結果血清クレアチニン値が上昇し、eGFR値は低い値になることがあります。すると、本当は腎機能が正常でも見かけ上、腎機能が低下しているとみられてしまうのです。

 逆に筋肉量の少ない女性やお年寄り、子供などはクレアチニン産生が少ないため血清クレアチニン値が低めとなり、eGFR値は高い値になります。結果、実際の腎機能よりも高めになってしまいます。どうしたらこのような間違いをしなくてすむでしょうか。それには採血による「血清シスタチンC値」測定という簡便な方法があります。シスタチンCからeGFRを計算する方法は筋肉量や運動量に影響されないので、より正確な腎機能が分かります。

 腎機能は年齢と共に自然に少しずつ低下していきます。60歳台ではeGFRが60以上あれば一生透析になることはないとされています。70歳以上ではeGFRが50台でも問題ないとされますが、10未満になると透析や腎移植が必要になってきます。

 腎臓には、血液から老廃物を取り除く働きがあり、その作業場が腎臓の糸球体というところです。eGFRは血液の老廃物が糸球体でろ過されていることを表し、腎機能をみる指標になっています。実は腎臓の一番大切な働きは、体のすべての細胞が十分に働けるような体内環境を作ることです。血液をろ過することで体の中の水分量やナトリウム、カルシウムなどの電解質の濃度を一定に保ち、体内環境を整えているのです。他にも血圧を上げるホルモンや赤血球を作らせるホルモンを作ったり、ビタミンDを作ったりとたくさんの働きがあります。健診で腎機能が悪いといわれたら、無用な心配を避けるためにもかかりつけ医にご相談されることをお勧めいたします。(吉原邦男 豆の木クリニック)