冷戦時代の遺物である敵対関係を解消する歴史的な国交回復である。歓迎したい。ただ、米国とキューバには乗り越えなければならない課題が山積しており、国交回復は関係正常化に向けたスタートだ。これからが正念場である。

 オバマ米大統領とキューバのカストロ国家評議会議長は54年ぶりに国交回復させることで合意した。互いの首都に置かれている利益代表部を大使館に格上げし、20日に開館式を開く予定だ。

 昨年12月、オバマ、カストロ両氏が国交正常化へ向けた交渉開始を電撃的に発表。その後、キューバが政治犯53人を釈放し、米国がキューバ渡航制限や経済制裁を緩和、ことし4月にはパナマで首脳会談を開き、5月には米国がキューバのテロ支援国家指定を正式に解除するなど国交回復の環境を整えていた。

 米国の対キューバ経済制裁解除や相互訪問などの取り組みを進める考えだ。

 米国は民主化や人権問題を、キューバは経済制裁の全面解除を相手に求めている。経済制裁全面解除のためには米議会の承認が必要だが、米議会は上下両院とも野党共和党が多数を占めている。共和党はキューバの反体制派弾圧を批判しており、承認を得ることは困難だ。

 経済制裁全面解除にはキューバが複数政党制、自由な選挙の実施、カストロ氏らが政治権力から退くことを条件にしており、キューバには受け入れがたいに違いない。大統領権限内の経済制裁解除から進めていくしかない。

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 キューバはフロリダ半島から百数十キロ離れた米国の裏庭だ。「のど元に突きつけられたあいくち」だといわれてきたゆえんである。

 1962年の「キューバ危機」は人類を全面核戦争の崖っぷちに立たせた。

 沖縄の米軍基地がキューバ危機に無関係でなかったことを共同通信が明らかにした。

 沖縄配備の核ミサイルが発射寸前にまで至り、文字通り「一歩間違えていたら」と震撼(しんかん)するような事実である。

 沖縄に駐留していた元技師らの証言によると、米軍内で、当時のソ連極東地域などを標的としていたミサイル部隊に核攻撃の命令が出されたというのである。しかも核攻撃命令は誤っていた。命令を疑問に思った発射指揮官の判断によってかろうじて発射が回避されたのだった。

 米軍が駐留するということはこのような危険性と常に背中合わせにいることである。

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 オバマ氏の任期は残り約1年半。国交回復が外交上の政治的功績になるのは間違いない。中南米地域に与える影響も少なくない。反米左派諸国も対米関係改善に向けて動き始めるはずである。米国は、反体制派の弾圧を認めることになりかねないことから慎重姿勢だが、交渉の糸口を模索してもらいたい。

 キューバには沖縄から100年以上前に移民し、その子孫が生活している。

 経済制裁によってキューバの人々は困窮を極めている。日本も国際社会の一員として、経済再建に積極的な役割を果たしてほしい。