国民の半分以上が反対する安全保障関連法案を早ければ15日の衆院特別委員会で採決する案が与党内に浮上している。16日の衆院本会議で可決し、通過させるスケジュールだ。

 審議をすればするほど疑問が噴出し、国民からの支持も得られていない法案を、何が何でも通そうとする姿勢は、民主主義で最も大切なプロセスをないがしろにしている。数の力におごった暴走というほかない。

 衆院特別委は法案採決の前提となる中央公聴会を13日に開くことを、自民、公明、維新の党の賛成多数で決めた。

 与党が採決の目安としていた審議時間の「80時間」を超えたことで「環境が整った」と判断したようだ。反対の声が日ごとに強くなる中、審議を続けることのマイナスを懸念したようにも見える。

 4月に安倍晋三首相は米議会で演説し、安保法案を「この夏までに必ず実現する」と公約した。米国との約束を履行するため結論を急いでいるのだとすれば、国会無視も甚だしい。

 衆院憲法審査会で参考人の憲法学者全員が、集団的自衛権行使を可能とする安保法案を「違憲」と主張するなど、疑問が急速に広がっている。憲法を軽んずる政治の動きに不安を募らせているのだ。

 政府自民党は、相変わらず砂川事件の最高裁判決を集団的自衛権行使容認の論拠とするが、都合のいい拡大解釈を国民は見透かしている。

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 政府の安保法案には問題があるとの立場から、維新の党が対案をまとめ、自民、民主、公明の3党に提示した。

 政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わり、個別的自衛権の拡大で対応する「武力攻撃危機事態」を設けるものである。維新の柿沢未途幹事長は「憲法との適合性を確保して国民の不安を払拭(ふっしょく)する内容だ」と説明している。

 独自案をつくった意義は認めるにしても、採決を前にしたこの時期になぜとの疑念が頭をもたげる。維新案を同時に採決すれば、与党単独の「強行採決」が避けられるという自民党内の思惑がのぞくからだ。

 違憲性が指摘され、国民の不安がぬぐえない政府案との隔たりは大きく、採決に加わるべきではない。「与党のサポーター」が維新の立ち位置ではないはずだ。

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 3日、国際通りで安保法案に反対する弁護士らのデモ行進があった。沖縄弁護士会による30年ぶりのデモは、立憲主義がないがしろにされている現状に法律家として強い危機感を感じてのことだ。

 衆院特別委は13日の中央公聴会に先駆け、6日に那覇市で参考人質疑を開く。採決日程が浮上した上での参考人質疑は「国民の声を聞いた」というアリバイづくりに終わる懸念がある。

 専門家も一般国民も過半数が反対し、審議を重ねれば重ねるほど疑問が広がるこの法案は、とても採決できる内容ではない。