自民党国会議員の勉強会で、参加した国会議員や講師が沖縄2紙を含む報道機関への圧力を公然と主張した問題で安倍晋三首相は3日、発言が不適切だったことを認め、衆院の特別委員会で陳謝した。菅義偉官房長官も4日夜、東京都内で翁長雄志知事と会談し、一連の発言についてわびた。

 政権中枢の安倍、菅両氏が相次いで陳謝したにもかかわらず、県内では、一件落着との受け止め方は少ない。根の深い問題が露呈した-と、事態の深刻さを懸念する声が広がっているのである。

 安全保障法制を審議する衆院の特別委員会。赤嶺政賢議員(共産)は「事実をゆがめて県民を侮辱したことが問題の中心」だと、安倍首相の考えをただした。このやりとりを聞いて思い起こしたのは、敗戦の年の70年前の1945年11月に召集された第89回帝国議会での質疑である。

 沖縄出身の貴族院議員・伊江朝助氏は、生き残って沖縄から脱出した陸軍将校が「今回の沖縄戦線の失敗は琉球人の『スパイ』行為による」と誤った情報を流したため、九州の疎開地に沖縄県民スパイ説が広がり、「沖縄5万の疎開民が受け入れ地から脅迫された」と憤まんやるかたない思いで訴えた。敗戦がもたらした流言は、本土と沖縄に深い亀裂をもたらしたのだ。

 あれから70年。自民党議員の勉強会での一連の発言は、本土と沖縄の間に今も深刻な亀裂が横たわっていることを浮き彫りにした。

    ■    ■

 東京外国語大学教授の山田文比古さんは、外務省から出向し、沖縄県サミット推進事務局長として97年から県庁に勤務した経験を持つ。

 雑誌「世界」の2012年6月号に論文を発表した山田さんは「沖縄に対して、本土から向けられる視線は、かつてないほど冷淡である」と指摘した。

 「被差別感情が広く県民に共有されるのは、差別の原因が単に過重基地負担の問題に止まらないからである」

 「歴史の記憶が沖縄と本土とのギャップをいっそう根深いものとしている」

 山田さんが危惧していた時よりも、事態はいっそう悪化していると見るべきだろう。 自民党勉強会での国会議員や講師の発言は、決して彼らだけの突出した発言ではない。インターネット上では、沖縄のメディアや世論を攻撃対象にしたヘイトスピーチ(憎悪表現)まがいの発言や、事実に反する情報が飛びかっている。

    ■    ■

 沖縄県民の政府不信や沖縄メディアの厳しい政府批判は、「差別的処遇」というしかない基地政策を沖縄に押しつけてきたからである。

 沖縄の世論が「ゆがんでいる」という指摘は、沖縄の人々の戦中・戦後の歴史体験をふまえていない暴言である。

 これまで安全保障のコストをより多く負担してきたのは誰なのか。そのことに思いが至らない鈍感さは、重症だ。

 沖縄と本土の間にできた深い溝を安倍首相は、どう解消するつもりなのだろうか。