心臓疾患の診断に不可欠な12誘導心電図データを救急搬送中に取得し、モバイルを使って医療機関に伝送する県内初のシステムが豊見城中央病院と豊見城市消防本部、糸満市消防本部で昨年12月から運用されている。7月8日、報道陣に訓練が公開された。

救急車内で「モバイル12誘導心電図伝送システム」を使った訓練を報道陣に披露する豊見城市消防本部職員=8日、豊見城市高安・市消防本部

 専門医による診断と治療方針の決定が搬送中に可能となり、病院に着くまでに治療チームの招集や手術室準備が始められるなど初期対応の時間が短縮。心筋梗塞の治療で重要な早期の血流回復による救命や社会復帰率向上が期待される。

 両消防本部はシステムが導入されるまでは、救急車内の心電図データを病院到着時に紙で渡していた。県内の消防本部でも現状は、ほぼ同様の運用だという。

 病院によると、昨年12月15日からことし7月8日夕までの利用実績は49件。循環器内科の新崎修部長は「システムがなければ助からなかったケースもあった」と迅速な治療につながったことを紹介。心筋梗塞以外でも大動脈解離との診断を得て、早期対応につながった効果も挙げた。

 全国的には横浜市の取り組みが先行しており、すべての消防にシステムを配備。治療開始まで約20分の時間短縮が図られたとのデータがある。豊見城中央病院ではシステム導入に合わせて10人の循環器内科医が24時間診断可能な体制を構築。横浜市同様に20分程度の短縮につながっている。新崎部長は「豊見城市と糸満市だけでなく、各地区にセンターをつくって全県規模で取り組めば、さらに多くの救命が期待できる」と述べ、各自治体や消防、医療機関での普及の必要性を語った。

 システムの伝送手段には九州地区で初となるクラウド方式を採用。心電図の画像品質の高さや遠隔地での閲覧、セキュリティー対策などの特徴がある。循環器疾患だけでなく外傷や脳卒中などへの活用拡大も可能となる。