オープン10周年を迎えた那覇市のミニシアター、桜坂劇場を運営するクランクの社長で映画監督の中江裕司が3日、那覇市の同劇場で報道各社の取材に応じた。同劇場の使命を「沖縄にいる全ての人に開かれた場所であることと、沖縄の文化芸術を発信すること」と話す中江は、県民の支援に感謝し、「いままでやってきたことを引き継ぎつつ、新しいことを始めたい」と抱負を語った。

桜坂劇場の歩みを振り返る中江裕司=那覇市・桜坂劇場

 閉館した桜坂シネコン琉映を引き継ぐかたちで2005年にオープンした。「街の中から映画館がなくなるのはあり得ない」との議論を重ねて始まった同劇場の成功の理由を尋ねられ、「端的にいうと、お客さんに支えられているというのは正直なところ」と感謝した。開館前に改装をしていると「おじいおばあが、この劇場を頑張ってやりなさいとお菓子を持って来たり、思い出を語る方もいた」と振り返る。

 会員数が最初の1年で1万人になったことにも観客の期待を感じたという。だからこそ「新しいことをやり続ける。自分たちがおもしろいと思ったことをやってみる。期待感に応え続けるスタッフは大変だ」と話した。映画だけでなく、ライブや市民講座、雑貨屋など総合的に文化発信する場所に育ってきた。

 社会問題を取り扱った作品も多く取り上げている。「お客さんと作り手、パフォーマーをつなぐのが劇場だと思っている。できる限り開かれていたいというスタンスは今までと変わらない」と強調する。東京のユーロスペースが、「ゆきゆきて、神軍」を公開したことでドキュメンタリーの流れをつくったことを例にあげ、「上映する場所さえあれば、何かが生まれている」と話した。

 社交街だった桜坂一帯は再開発が進む。中江は「この劇場ができることで人の流れが変わった。これからより混沌(こんとん)が増して面白くなる。その十字路の真ん中に桜坂劇場があればいいと思う」と語った。