政府与党は早ければ15日にも安全保障関連法案を衆院特別委員会で採決する方針だ。

 特別委での審議が110時間となり、有識者から意見を聞く中央公聴会も終わり「環境が整ったから」だというが、それは違う。

 100時間以上審議しても議論がかみ合わないのは、法案そのものに問題があるからにほかならない。公聴会では5人のうち3人が「憲法違反」を指摘するなど、採決できる環境でないことははっきりしている。

 13日の中央公聴会で、野党推薦の木村草太首都大学東京准教授(憲法学)は「日本への武力攻撃の着手がない段階での武力行使は違憲だ」と述べ、法案成立後に違憲判決を受ける可能性が高いことにも言及した。

 集団的自衛権の行使を可能にする安保法案には、憲法学者の大半が「違憲」で一致している。衆院憲法審査会でも3人の憲法学者が「違憲」と言い切り、内閣法制局長官経験者からも「違憲」の声が飛び出している。ことは立憲主義の根幹に関わる問題であり、法律家たちの危機感がひしひしと伝わる。

 公聴会では、集団的自衛権行使の前提条件「存立危機事態」のあいまいさも指摘された。

 最も重要な基準に明確な定義がなく、時の政府の裁量に任されるという一点をとっても、審議は不十分である。

 衆院特別委での15日の採決は絶対に許されない。

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 ここへきて安倍晋三首相は自民党のインターネット番組に出演し、法案の必要性の説明に躍起になっている。

 「安倍は生意気だから今度殴ってやると言う不良が出てきて、いきなり前を歩くアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。これは今度の法制でできる」

 集団的自衛権をこう例えた。

 けんかならけがで済むかもしれないが、集団的自衛権の行使はミサイルを迎撃したり、武装集団に対処したりというものだ。

 公聴会では、安保法制が沖縄に及ぼす影響についての発言もあった。有識者から、米軍基地の恒久化や有事の際に標的となるなどの懸念が示された。

 沖縄に暮らす私たちにとって安保法案は、友達同士のけんかという軽い例えで済む話ではない。

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 そもそも10本の現行法の改正案をひとくくりにして審議する政府のやり方は乱暴で、最初から国民に分かってもらおうという意思が感じられない。

 共同通信社の6月の世論調査では、84%が法案の説明が足りないとし、63%が今国会成立に反対している。

 国民に最も身近な市町村議会からも廃案や慎重審議などを求める意見書が460件以上出されている。

 安倍首相は、採決について「決めるべき時は決める」と発言しているが、国民軽視も甚だしい。

 今は明らかに決めるべき時ではない。