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  • 安保法案採決は憲法を軽んじ主権者を無視した暴挙というほかない
  • 首相自ら「国民の理解が進んでいない」と認める中での強行
  • 国民の多くが「ノー」という法案を強引に成立させるべきではない

 これほど憲法を軽んじ、立憲主義をないがしろにした事例がかつてあっただろうか。

安保法案の強行採決を伝える家電量販店のテレビ=15日午後0時28分、那覇市・ベスト電器天久店

 ほとんどの憲法学者が安全保障関連法案を違憲だと指摘し、世論調査で過半数の国民が法案に反対し、およそ8割の人たちが慎重審議を求めているにもかかわらず、数の力で採決を強行する。主権者を無視した暴挙というほかない。

 憲法と民主主義を守るためにも「違憲」法案を成立させてはならない。

 集団的自衛権の行使容認を柱とする安保関連法案が15日、衆院の特別委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決された。法案は、自衛隊法、武力攻撃事態法など現行法の改正案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、他国軍の後方支援を随時可能とする「国際平和支援法案」という名の新法1本。

 法案の審議時間が14日までに113時間を超え審議は尽くされたと与党は主張するが、これだけ多様な法案を一括して提出したこと自体が問題なのであって、過去の審議時間は参考にならない。

 安倍晋三首相自ら「国民の理解が進んでいる状況ではない」と認めているように、採決できる状況にないことは誰が見ても明らかだ。

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 法案は、憲法9条の下で抑制していた「軍事力」を積極的に運用し、米軍を地球的な規模で支援していくねらいがある。

 だが、どのような状況の時に集団的自衛権を行使するのかという肝心な点について、政府の答弁は迷走を続けた。安倍首相は「総合的に判断する」と説明するが、解釈の余地を広げ、時の政権の恣意(しい)的な判断に委ねるようなものである。

 武力の行使という国の命運にかかわる事態があいまいで、文言の理解が内閣の中でも与野党の間でも共有されていないというのは致命的だ。

 自衛隊は「自国防衛のための必要最小限度の実力組織」だというのが政府の公式見解である。しかし、安保法案と「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)によって日米軍事一体化が進めば、自衛隊の役割は大きく変わる。

 法律でもない事務方が決めた指針が、憲法の規範を突き崩し、安保条約の規定を超えて最高法規のように作動するのである。日米ガイドラインとリンクした安保法案が対米従属法案と批判されるのはそのためだ。

 安倍首相は、米国で安保法案を夏までに成立させることを約束した。

 安倍首相は、中国を念頭に、安保法案によって「抑止力が向上する」と繰り返し強調する。それはほんとうだろうか。

 軍事力を過信し、対話の努力を欠けば、相互不信が高まり、不安定な軍備増強を招くおそれがある。いわゆる安全保障のジレンマと呼ばれる事態だ。東アジアはすでに安全保障のジレンマに陥っており、安保法案が逆に抑止力を低下させる可能性が高い。

 沖縄にとって深刻なのは、安保法案とガイドラインに基づいて沖縄要塞(ようさい)化が進められていることだ。名護市辺野古の新基地建設はその一環である。

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 安保法案が強行採決された15日、国会前では朝から抗議行動が続いた。テレビ・ニュースを見ていて胸に突き刺さったのは「安倍のために死んでたまるか」という強烈なシュプレヒコールだった。

 安倍政権は、この言葉の意味を深刻に受け止めるべきである。

 この若者のシュプレヒコールは、国民の理解が得られていないどころか、法案そのものに対する拒否反応が極めて強いことを物語っている。

 「敵意に囲まれた基地は機能しない」のと同じように、主権者である国民から「ノー」を突きつけられた安保法案は違憲訴訟にさらされ脆弱(ぜいじゃく)にならざるをえないだろう。

 そもそも国民から「ノー」を突きつけられた法案のために海外で武力行使の任務に従事する自衛隊員の苦悩や迷いを為政者は考えたことがあるのか。リスクが増えるのかどうかさえまともに答えられない政府の姿勢は誠実さを欠く。

 この状況の中で法案を強引に成立させるべきではない。