2017年(平成29年) 11月20日

社説

社説[高齢運転手と認知症]「返納」で困らぬ体制を

高齢ドライバーによる重大事故が相次いだことを受け、75歳以上の認知機能検査を強化した3月の改正道交法施行から半年がすぎた。全国で検査を受けた高齢ドライバーは約111万8千人で、認知症の恐れがあると判定されたのは約3万人に上ることが警察庁のまとめで分かった。

 改正道交法で義務付けられた医師の診察を受けた人のうち、1622人が認知症と認定され、免許取り消しや停止、その手続きを進めている。悲惨な重大事故を未然に防ぐことを考えれば、改正道交法の一定の効果が出たとみることができるだろう。

 医師の診察を待っている人が約1万人おり、さらに増えるとみられる。診断のスピードアップが必要だ。

 厚生労働省によると、2025年に65歳以上の認知症患者は675万~730万人に増えると推計されている。約5人に1人の割合だ。

 高齢ドライバーと認知症の関係はますます深刻な問題になるのは間違いない。

 気になるのは認知症の恐れの約3万人に加え、認知機能低下の恐れも約30万人いることだ。改正道交法は高齢ドライバーに3年ごとの更新時に記憶力や判断力などの認知機能検査を義務付けている。

 逆走や信号無視などをした場合は更新前でも臨時検査を受けるが、検査回数を増やすことを検討する必要はないだろうか。医師の診察で免許保有が認められた人のうち約7割が「認知症となる恐れがある」として半年後の再診断を課せられているからだ。

■    ■

 一方、認知症に限らず運転免許証の自主返納は今年1~9月までに約32万2千件に上り、昨年1年間の約34万5千件を大幅に超える見通しだ。

 県内でも免許証の返納は右肩上がりである。

 県警によると、今年1~9月までに免許証を返納した65歳以上の高齢者はすでに2443人に上る。過去最多だった昨年1年間の2659人を上回るペースである。

 免許証を返納すると受け取ることができる「運転経歴証明書」を提示すれば、バスやモノレールの運賃が半額、タクシー料金も10%安くなる。このほか割引を適用する温泉や飲食店がある。

 加齢に個人差があるとはいえ、視力や運動能力、認知機能などが低下するのは不可抗力である。高齢ドライバー自身が運転技能の衰えを自覚したり、周囲の人が運転に異変を感じたりすれば自主返納した方が望ましいだろう。

■    ■

 免許証を返納しても高齢者が買い物や通院など「生活の足」に支障を来さないようにすることが重要だ。

 本土では公共交通機関が発達していない地域で自治体と自治会が費用を出し乗り合いタクシーの導入が増えているという。県内でも地域をこまめに回る乗り合いバスを運行している自治体がある。

 高齢ドライバーが重大事故を起こしてからでは取り返しがつかない。地域社会全体の問題ととらえたい。

 県警には返納者が以前と生活が変わったのか実態調査をし、関係機関と連携して対策に生かしてもらいたい。

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