幼いころ、近所の魚屋のおばちゃんが魚をさばく作業にみとれた。リズミカルに動く包丁さばきは心地よく、顔を近づけすぎてうろこがぺたぺたと飛んできた

 ▼そんな思い出が浮かんだのも、沖縄市立郷土博物館で始まった企画展「切る!」を見たから。暮らしに欠かせない刃物を題材に、石器や刃先のそりが大きい島包丁など、生活の変化とともに形や質の変遷を紹介している

 ▼企画展のきっかけは数年前。ナイフで鉛筆を削っているところを想像してみよう-という宿題に困った小学生が博物館を訪れた。不憫(ふびん)に思った同館の川副裕一郎さんは一緒に挑戦。最初は怖がったが最後は楽しんでいたという

 ▼危険な側面も持つ刃物の扱いが変化するのは当然な流れ。懐かしい鋼の彫刻刀は、ステンレス製で刃先のカバー付きに姿を変えた。けがをしない工夫とともに進化を遂げた刃物もいいが、錆(さ)びて使えなくなった小刀も趣がある

 ▼磨製石器と棒を使って髪の毛を切ったり、サメの歯でナイフをつくり、実際に豚肉を切る実験も紹介。使われなくなったものを見つめ直す機会を提供する試行錯誤が面白い

 ▼「刃物を遠ざけた方がいいのか、そうじゃないのか、答えは出ませんでした」。川副さんたちは企画を前に話し合いや調査を重ねた。刃物と人間の長い歩み。素直に向き合うのも楽しい。(赤嶺由紀子)