虐待などで、安心して暮らせる居場所を失った子どもの一時避難先となる「子どもシェルター」の全国ネットワーク会議が4、5の両日、那覇市の県総合福祉センターで開かれた。県内初開催で、シェルターの運営などに関わるスタッフや弁護士ら約100人が参加した。スタッフ分科会では、琉球大の本村真教授(社会福祉学)が、子どもの問題行動の裏にある「トラウマ記憶」について講義した。

「トラウマ記憶」について解説した本村真琉球大教授

子どもシェルターの職員らが全国から参加し、運営や子どもへの対応の課題を共有したスタッフ分科会=県総合福祉センター

「トラウマ記憶」について解説した本村真琉球大教授 子どもシェルターの職員らが全国から参加し、運営や子どもへの対応の課題を共有したスタッフ分科会=県総合福祉センター

 本村さんは、トラウマ記憶(心の傷)は、過酷すぎて耐えがたい体験を「瞬間冷凍」して感情などをまひさせることで自分を守る方法だと説明。その体験が丸ごと「ひとかたまり」になってセットで記憶されるのが特徴だと解説した。

 トラウマ記憶は音や匂い、触覚など類似する何らかの刺激がきっかけとなって「瞬間解凍」され、ワンセットで再現されるとした。

 解凍されるのは怒りや恐怖感、絶望感などの強烈な感情や、自分が悪いという幼児的な信じ込み、逃げる、うそをつくなどそのときに有効だった対処方法など。

 いまは中学3年生であっても、記憶が瞬間冷凍された3歳のその子が前面に出てきてしまう。本来なら中学3年生相当の知力や体力で試行錯誤して解決策を見つけるところを「トラウマ記憶が再現されることによってワンパターンの対処方法が繰り返される」という。

 例えば、万引はしないと約束しても、いざコンビニに入ると「いま万引しないと、またひもじい3日間が待っている」という「瞬間冷凍」時の記憶のスイッチが入り、同じことを繰り返してしまうことがある。

 本村さんは「成育途中でストレスを抱え、先行きに不安を感じている子どもはすぐにスイッチが入ってしまう。そこで責めると、『どうせ自分は誰からも大切にされない』『どうせ大人は分かってくれない』と思ってしまう」と指摘。

 「トラウマの記憶スイッチは必ず切れる」として、対処方法として、スイッチが入っているときは不必要に追いかけずに「適切なスルー」をし、スイッチが切れているニュートラルな状態のときに語り掛けたり、アプローチするのがいいとアドバイスした。

 また、特に児童期であれば「理解ある大人との交流による『新鮮な体験』が加わることで、トラウマ記憶の影響が薄れる可能性が高い。ワンパターンを崩し、新鮮な体験を提供することが支援のポイントの一つ」と指摘した。

 本村さんは「子どもに何が起こっているかを理解するためにトラウマ記憶の知識が役に立つ」と語った。

 スタッフ分科会には全国のシェルター関係者30人余りが出席し、日ごろの支援の悩みや課題を話し合った。

 禁煙など、シェルター内のルールが守れない子どもたちにどう対応したらいいかという声が上がった。本村さんは「課題が多い子の場合、優先順位をつけて、ちょっと頑張れば守れるルールをつくり、できたら褒めることで、『ここにいていいんだな』という安心感を高めることが大切」と助言した。