戦後70年にあたって共同通信社は5月から6月にかけ、全国の有権者を対象に、郵送方式による世論調査を実施した。調査結果から浮かび上がってくるのは、憲法の平和主義に対する信頼の高さが依然として揺らいでいない、という点である。

 憲法について「このまま存続すべき」と答えた人は60%で、「変えるべき」の32%を大きく上回った。

 日米安保条約に基づく同盟関係についてどう思うか聞いたところ、「今のままでよい」が66%で、「今よりも強化すべき」は20%だった。

 「55年体制」の下で保革のイデオロギー対立が鮮明だった冷戦時代、憲法と日米安保は、あれかこれかの路線選択の問題として提起されることが多かったが、「55年体制」と東西冷戦の崩壊で国民意識が変化した。憲法と日米同盟を二つながら評価する世論が定着、憲法についても日米同盟についても、今や、約6割が現状維持派である。

 注目したいのは、政府が中国や北朝鮮の脅威を声高に主張しているにもかかわらず、多くの回答者が、日米同盟の強化ではなく、現状維持を求めていることだ。

 安倍晋三首相による「戦後70年談話」について、植民地支配と侵略に対する「おわび」の言葉を「入れるべき」だと答えた人は67%にのぼり、「入れる必要はない」の30%を大きく上回った。

 ここにも隣国との関係改善を重視するバランスの取れた平和志向を見て取ることができる。

    ■    ■

 実際、中国との関係をどうすべきか聞いたところ、76%が「関係改善に努力すべき」だとまっとうに答えている。

 問題なのは、安倍内閣がこうした有権者の声に謙虚に向き合おうとしていないことである。

 戦後の政権で安倍政権ほど強行一点張り、問答無用の姿勢が目立つ政権はない。安全保障法案や名護市辺野古への新基地建設はその典型だ。

 米軍普天間飛行場の県内移設については「工事を中止し沖縄県側とよく話し合うべき」だとの回答者が最も多く、48%。「政府の方針通り進めるべき」が35%、「県内への移設はやめるべき」が15%だった。

 全国調査でも63%が「工事中止」か「移設断念」を求めていることになる。

 辺野古移設の是非が最大の争点となった昨年の名護市長選、県知事選、衆院選沖縄選挙区で辺野古移設に反対する候補者が完勝した以上、工事を中止し県や名護市と話し合いを始めるのは、当然である。

    ■    ■

 外交・安全保障政策を円滑に進めていくには、幅広い国民の理解と協力、下支えが不可欠である。国民の合意や賛同が得られないまま、一政治家の政治信条だけで突っ走るのは極めて危険だ。

 今の日本の政治は、野党が弱く、与党内にもけん制する勢力が存在しないため、まるで安倍首相1人に振り回されているように見える。

 そのような状況だからこそ、安倍首相の、首相としての資質が問われなければならないのである。